SNSで突如巻き起こった「異常成人女性バトル」が、大きな話題を呼んでいる。
各々が愛する作品やキャラクターのグッズで埋め尽くされた部屋を投稿し合うこのムーブメント。
「異常成人女性バトルですか、負けませんよ」
バズのきっかけとなったのは、ポケットモンスターに登場するフシギダネのグッズでいっぱいになった緑の部屋だった。
投稿者が「異常成人女性バトルですか、負けませんよ」とコメントを添えて写真を投稿すると、その言葉に呼応するように、さまざまな“推し”を持つ人々が、「私も負けない」「対戦よろしくお願いします」「もっと異常になりたい」と、自慢の部屋を披露していった。
ヒトカゲ、プリン、ヤドン、ゲンガー、メタモン、チコリータ、グレイシア……といった、それぞれのポケモンに特化した部屋やグッズ棚が次々と投稿される。
さらに、この“バトル”はポケモン界隈だけにはとどまらない。
ハリー・ポッターやMARVEL(マーベル)など、別ジャンルのグッズを集める人々も参戦。作品やジャンルを超えて、“推し部屋”を作っている人たちの交流が盛んに行なわれた。
なかでも注目を集めたのが、「ハリー・ポッター」に特化した部屋だ。
部屋の中には、ハリー・ポッター関連のグッズが所狭しと並んでいる。だが、驚かされるのは単に“数が多い”ことではない。そのディスプレイの仕方にこそ、この部屋のすごさがある。
杖は額縁に収められ、壁に丁寧に飾られている。
特に目を引くのが、天井から吊り下げられた無数の手紙。空から降り注ぐように配置されたそれらは、映画の印象的なシーンを思い起こさせる。グッズを飾るだけでなく、作品世界そのものを部屋の中に再現しようとする愛情が伝わってくる。
この部屋を作ったのは、30代会社員のsaraさんだ。
「20年ほど前からハリポタの世界に魅せられ、レプリカを中心に集め始めて増え続け、家を建てる際に専用の部屋を作ろう!と思い立ちました」(saraさん、以下同)
グッズにかけた総額は、少なく見積もっても600万円を超えているという。だがsaraさんは「かけた金額が愛とは思ってないので」とも話す。
「実用性はありません(笑)」
推し活という言葉ができる前から「無理をしないオタク活動」を心がけ、無理なく、長く、好きな世界と付き合ってきた積み重ねがこの部屋につながっている。
こだわりのひとつが、シリウス・ブラックにまつわるドアだ。
「一番好きなキャラであるシリウス・ブラックの自宅の部屋のドアを再現しました。一番近いドアノブを探し、SIRIUSと名前を入れてます。両開きにして弟のレギュラス・ブラックの名前も入れてます」
既製品を集めるだけでなく、作品のモチーフを自分の手で作り出すことで、この空間を唯一無二のものにしている。
この部屋は、saraさんにとってどんな存在なのか。
「圧倒的に満足感があります。実用性はありません(笑)。見慣れてはいますが疲れたときなどにレイアウトした部屋を眺めていると気分が上がって癒されます」
一方、この異常成人女性バトルに「界隈違いの異常成人女性です」と参戦したのが、MARVELオタクのあみちょりさんだ。
投稿された部屋には、MARVEL作品のフィギュアがずらりと並んでいる。棚に収められたコレクションだけでなく、等身大に近いサイズのスタチューも存在感を放っており、ディスプレイの照明の雰囲気も相まって、まるでショールームのような部屋だ。
なぜここまでの部屋を作るにいたったのか。
あみちょりさんはもともと、洋画を観ることさえ苦手だったが、家族に誘われて付き添いで観た映画『ブラックパンサー』をきっかけに、MARVELの世界にハマっていった。
「それからMARVELのグッズを見てみたいという興味本位で、渋谷にあったホビーショップ『トイサピエンス東京』に行き、ホットトイズを生で見たときに私の中でフィギュアの概念が変わりました! 帰るときには買うつもりもなかった“1/6ホットトイズ”を手にしていたのを覚えています!」(あみちょりさん、以下同)
そこから徐々に、1/4サイズ、1/1サイズと、より大きなフィギュアやスタチューにも魅了されていき、気づいたときには部屋が完成していた。
収集を始めてから約3年。コレクションの総額は、700万円弱になるという。
あみちょりさんの部屋にも、見せ方へのこだわりが詰まっている。
MARVEL部屋のこだわりポイントは?
「フィギュアやスタチューが目立つよう、背景部分をDIYで黒にしたり部屋の照明を調節したりと、こだわった部分は数え切れないですが、1/1スタチューのために特注で作ってもらったアクリルケースもこだわりポイントの1つです!」
グッズは飾り方次第で、さらに魅力を引き出すことができる。saraさんがハリー・ポッターの世界観を部屋全体で表現していたように、あみちょりさんも背景や照明、ケースまで含めて、MARVELのフィギュアがもっとも映える空間を作っている。
では、この部屋を作ったことで、どんな変化があったのか。
「ある日友人からせっかくならSNSでMARVELのアカウントを作って載せたらいいのにと言われたことがきっかけでSNSに写真を載せるようになったのですが、それから同じ趣味の方に見てもらえるようになり、コレクションに対してのまた新たなモチベーションになっています!」
自分だけで楽しんでいた部屋が、SNSを通じて同じ趣味の人たちとつながるきっかけになる。今回の「異常成人女性バトル」も、その延長線上にある出来事だったのかもしれない。
そして、あみちょりさんはこう続ける。
「あとは何より自分にとって癒しの空間になっているので、生活が豊かになった感じがしています」
「異常成人女性バトル」という言葉の響きだけを見ると、どこか自虐的でもある。だが、集まった部屋の数々を見ていると、そこにあるのは異常さというより、愛の強さだ。
大人になっても、好きなものを好きでい続ける。そして、その好きなもののために、自分だけの空間を作る。
その姿が多くの人の心を動かしたからこそ、この“バトル”はここまで広がったのだろう。
取材・文/ライター神山

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