誰も知らない中国調達の現実(82)-岩城真

 バイヤーは常に会社からコストダウンすることを求められている。なぜ、コストダウンし続けなくてはならないのか、理由はいろいろあるが、コストダウンを求められている現実は否定できない。
だから、新しい部品の発注先と発注価格を決めても、バイヤーの仕事は終らない。さらにコストダウンする方策を考え、実施し、結果を出してゆかなくてはならない。

 部品の調達先を海外に求める、早い話、海外転注するというのも、上述のバイヤーが常にコストダウンを求められているからである。

 製品が成熟してくると対前年比で発注価格を低減していくこと、つまりコストダウンしていくことは、当然のことながら困難になってくる。この閉塞感を打破するひとつの手法が海外調達なわけである。品質的な問題をクリアし、海外サプライヤーへの転注に成功すると、大きなコストダウンの成果が得られる。(逆に言うと大きなコストダウンが期待できるから幾多の問題を乗り越えて海外転注を試みるのである。)

 つまり我々バイヤーが困難を伴う海外調達を試みるのは、途上国の経済振興や国際親善のためなどではなく、コストダウン以外の目的は皆無に等しいのである。

 ところが、海外へ転注をした翌年から、多くの場合ピタリとコストダウンが止まるのである。(おもに中国ローカルサプライヤーを対象としている。日本工場そのものを中国に移転したようなハイレベルの日系工場やノックダウンからスタートする場合は別である。)

 製品としての成熟度が高い産業機械部品の価格低減は上述の如く困難であるが、物価、人件費の上昇と相対比較すれば、日本国内では結構なコストダウンが進んでいたとも考えられる。


 一方、一旦中国調達に切り換えると、中国の人件費が上昇すれば、人件費の上昇分はきっちり価格転嫁される。なぜ、こんなことになってしまうのか? 理由はいろいろあるが、大きな理由3つあると思う。

 1つ目は、中国のサプライヤーの総合的な技術力の低さと薄さ(安定度)である。日本サプライヤーの品質は、余裕を持って及第点をクリアしているのに対し、中国サプライヤーの品質は及第点ギリギリである。(バイヤーも海外転注を早急に進める必要から、ギリギリでも及第点を超えれば転注に踏み切る。) ゆえにサプライヤーの技術者もバイヤーも、及第点を維持すること、少しでも及第点に対し余裕を持った品質まで向上させることにエネルギーが注がれ、とてもコスト低減目的の改善を志向する余力が生れない。

 そして2つ目は、中国のエンジニアの多くが技術に対し極めて保守的であることではないだろうか。つまり一旦コストや品質でOKを貰ってしまうと、外部から相当強い力が加わらないとその方法を変えようとしない保守性である。これはかつて国営企業時代に徹底的に刷り込まれてしまった国民性であるのかもしれない。(決められたことに対して従順に従っていれば、結果がどうであれ責任を追及されることはないが、決められた方法と異なった方法、それが改善を目的としたものであっても、結果が裏目に出れば徹底的に責任を追及される。) この保守性が、改善力の弱さとして表れている。

 最後の3つ目は、バイヤーが日本国内での調達価格との差に満足してしまい、あるいはそれをコストダウンと錯覚してしまっていることではないだろうか。
これは深刻な問題である。同業に対し自社だけが海外調達しているなどということはまずない。つまり技術や諸条件で海外調達が可能なものは、海外調達品価格が、その製品の日本での標準的な価格に取って代わってしまっている。単に海外調達しているといったことでは、競合する同業にコスト優位性を見いだせないのである。海外調達とは、どこまでも続く茨の道に他ならないのかもしれない。(執筆者:岩城真 編集担当:水野陽子)

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