袋の口を縛ったり、紙を束ねたりとさまざまな用途がある輪ゴムだが、「結果を出す人」は輪ゴムを上手く活用している、らしい。
先ごろ出た『すごい文房具デラックス』の「「結果を出す人」のビジネス輪ゴム術」という記事には次のような輪ゴムの活用術が紹介されている。
たとえば名刺整理。出先で大量に名刺を受け取ったものの、整理するファイルがその場にはない。いちいちファイルを持っていくのもかさばるし……そんなとき、携帯性の高い輪ゴムは便利だ。分類してカテゴリーごとに輪ゴムで束ね、付箋でタグをつけておけばとりあえずの処置となる。
このほかにも、濡れたペットボトルや紙コップなど、ペンで記名したり付箋を貼ることのできないものでも輪ゴムを使えばタグがつけられるし、やらなければいけないことが複数あるときは、色違いの輪ゴムを手首にはめてリマインダーとして使う、なんて使い方もできる。とはいえ、実際に輪ゴムをいくつも手首につけた写真を見るとちょっとマヌケ……いや、仕事ができるに越したことはありません!
『すごい文房具』は一昨年の秋にシリーズ第1作が出て以来、昨年秋の『すごい文房具リターンズ』、今年春の『すごい文房具エクストラ』とバージョンを重ねてきた。
「情熱文具大陸」(ん? どこかで聞いたようなタイトルだが)という企画では、各界で活躍する人たちがおのおの愛用の文具について語っている。そこでは、歌人の枡野浩一が短歌用にオリジナルの原稿用紙を使っていたり(デザインはブックデザイナーの名久井直子)、女流棋士の高橋和が、子供たちへの指導用に将棋の駒をかたどったスタンプを特注でつくっていたりと、オリジナルの文具も目立つ。高橋によれば、負けたときに対戦表に黒丸をつけるかわりに「飛車」や「金」のスタンプを押してあげると子供たちのモチベーションもあがるのだとか。
ほかに目を惹くのは、職人系の人たちが使う文房具。
職人系の文具についてはべつのページでも「あなたの知らない“現場系”文房具の世界」と題してとりあげられている。暗い現場でも手元を照らせるLEDライトつきの建築用ノック式鉛筆や、ヘルメットに取りつけられるペンホルダーなどなど、どれも建設現場などで働いていなければ使うことのなさそうな文具だけれども、何だかあこがれてしまう。
今回の『すごい文房具デラックス』では、シリーズでは初めてバッグ類についての企画も組まれている。「カバンだって文房具!!」というタイトルはやや強引だが、そこで紹介されている商品を見ると、たしかにそうかも……と納得してしまう。たとえば「モバイラーズバッグ」はその名のとおりどこでも仕事ができるよう、“机の上をそのまま運ぶ”という発想でつくられたバッグ。これにはA4ファイルがすっぽり収まり、また“机の引き出し感覚”で使えるというガジェットケースがついている。キャリーケースにもピタッと装着できるので持ち運びにも便利だ。持ち運びといえば、出先でも必要なデータがスマートフォンやパソコンからすぐに取り出せるツールについても、「デジタル偏差値30からの「スマホ文具」講座」と題するページが設けられている。
ここまで紹介した文具はすべて実用系だが、実用的かどうかは二の次で面白さを優先したガジェット系の文具がたくさん紹介されているのも『すごい文房具』シリーズの楽しみのひとつ。今回でいえば、匂いをつけた文具を集めた「オイニ~系文房具」のページがまさにそれ。香りつきの消しゴムは昔から定番だが、最近ではガリガリ君ソーダ味を模した香りつき消しゴムなんてものも発売されている。かじった跡やコメントつきの棒まで再現してあって細かい。消しゴムばかりか、マーカーにもガリガリ君バージョンがあるのには驚いた。
さて、『すごい文房具デラックス』の目玉は何より、昨年に続き行なわれた「第2回OKB48選抜総選挙」だろう。OKBとは「お気に入りボールペン」の略で、一般参加者を交えての「握手会」(試筆会)とWEB投票によってボールペン日本一を決めるという本企画では、前回1位だった三菱鉛筆「ジェットストリーム」が今回もトップに立った。この人気はちょっとやそっとで揺るぎそうにないが、それも、開発者いわく《年に1~2回は微調整していて、最近では、堅牢性を上げたり書き味をもう少し柔らかくしたりと、弱かった部分を強く》するなど、たゆまぬ努力のたまものといえよう。
なお、2位以下を見ると、前年2位だったパイロットの“消せるボールペン” 「フリクションボール」が、前回4位の三菱「ユニボール シグノ」とそのままランクが入れ替わるなど波瀾も見られる。
……と内容を紹介していくときりがない。文具好きはまずは本書を実際に手に取って、その物量に圧倒されてみてください。ただし、あれもこれもと欲しくなっても、当方は一切関知しませんが。(近藤正高)