ああ、面白かった!
やはり、そんな最終回でした。日曜劇場「ごめんね青春!」(12月21日放送 TBS午後9時)。


一時は、もしかしたら、放火が平助(錦戸亮)のせいじゃないって展開もあるかもと思ったこともありましたが、あまりに平助が毎回涙目になるので、その可能性をすっかり忘れていました。不覚!
最後の最後で、告白して、罪を浄めて、終わるのだと思い込んでいたところ、目の前でフッと落ちる球を投げられた感じにやられました。

文化祭の2日間、めいっぱい楽しんだ後、締めに、平助が「ミスター青春」に選ばれて挨拶のために壇上へ。ドラマ開始から27分あたりから35分くらいまで、ついに、平助が全校生徒及び先生たちに、14年前礼拝堂を燃やした件を告白します。
ざわつく一同。それなりに理解あるシスター吉井(斉藤由貴)もさすがに憤りを露わにし、平助を責めますが、生徒たちは、平助の味方でした。


結局、サトシ(永山絢斗)が、当時の担当刑事(岩寺真志)を連れてきて、火事の原因が平助の投げた花火だった確率の低さを明かします。
先生たちが口々に、罪を肩代わりする発言していく場面は、実は、全員が共謀して平助を庇っているのではないか? と疑ってみたり。
でも、結果、そうはならず、ハッピー展開。

あまりに清々しい終わり方だったので、くどくど言わず、平助とお母さんの菩薩(森下愛子)と一緒に「ああ、面白かった!」だけで良いような気もしつつ、でもそれじゃなんなんで、あえて言おう、
これでいーのか、ごめんね青春!

なぜなら、平助が無罪だったことが判明したことによって、14年間も平助が苦しんでいた意味はあったの? とふと思ったので。そんなの酷ではないでしょうか!?
もちろん、こんなにも清々しく終わったのは、平助が無罪だったこともあるでしょうし、罪を犯したままだと、告白したとしても、時効だったとしても、生涯傷は残りますよ。たぶん。

無罪で良かった。

まあ、青春の確執だった想い人・祐子(波留)と親友・サトシと和解して、りさ(満島ひかり)という伴侶を得たから、それでいーのだ! なんですかね。

そこで、お母さんの名言です。
「(青春に)いい年してしがみついてると高い延滞料金を支払わなくてはなりません。彼のように」

つまり、罪とは思春期のメタファーだったのでしょう。
自分が放火したと言えなかった理由を「学校が好きだったから」と言った平助。

なにかと理由をつけて、学生気分でいたかった。失恋と友情が壊れたことへの傷から脱出することができなかった。ってことなのかなと。3年前の母親との死別も含めて。

だから、最後に制服を着て、ちゃんと卒業するのです。
「ああ、面白かった」は母の辞世の言葉。
平助にとって卒業は、こじらせちゃった思春期を終えること。それは一回死ぬにも近いこと。そして、ようやく、大人として生まれ変わったのかもしれません。キリストの復活のように。
おめでとう!
あれ。これって「新世紀エヴァンゲリオン」ドラマシリーズの最終回みたいではないですか?
そういえば、「エヴァQ」って、シンジくんが14年眠っていて起きた後の世界でした。

むむむ、平助ってシンジくんだったの? 

よからぬ妄想はさておき。平助がセーフだったことによって、むしろ、学校に内緒でDJやっていた三宮(生瀬勝久)のほうが明確な罪人(学校に内緒で副業していた)だったなんて。切ないですね。
それによって、学校辞めた平助の新しい仕事ができるので、フォークダンスの輪のようにすべてまるっとOKなんですね。

生徒たちも生き生きしていて、文化祭のあれこれが本当に楽しかったです。
特に、遠藤ちゃん(富山えり子)の相撲ミュージカル。
木村カエラの「Butterfly」の曲とともに力士たちがシコを踏むと、なぜ、こんなにも面白いのか。瞬間、そこが下北沢駅前劇場みたいな空気になりました。
でも、この歌、間接的に平助を祝福する歌のようです。ここぞ、というシーンで使わないさりげなさが素敵。
ついでに、教頭の豪徳寺(緋田康人)とのクイズ合戦のところで遠藤ちゃんの手元にあった「釈迦釈迦ポテト」が気になった!

演劇ファンなら、なんといっても、風間杜夫と平田満のガチぶつかり合いと、並んで酒を飲む場面に涙したのではないでしょうか。当初から、ふたりの共演には伝説の「蒲田行進曲」の銀ちゃんとヤスの久々の共演と話題でしたが、最終回、ふたりが熱く本音を吐露する場面こそ、見たかった! という感じです。
(子供を)信じた者も疑った者も、同じである、という深いところを臭みなく演じてみせてくれた、風間杜夫の眉毛の白髪、平田満のもみあげの白髪の強烈な説得力たるや。

このふたりの父親をはじめとして、平助とさとし、平助と祐子、祐子とりさ、海老沢(重岡大毅)とあまりん(森川葵)などなど、みんながそれぞれ落とし前をつけました。
ミス青春に選ばれたコスメ(小関裕太)も最後の最後までチャーミングでした。

そして、主役の錦戸亮。「タレカッパ」というあだ名にふさわしい、困ったようなうるうる瞳をし続けただけでなく、時折険しい顔になるギャップや、高校生と31歳の時の変化を鮮やかに演じ分け、最後には、先生たちの出し物のところで「エイトレンジャー2」でも見せたアイドル笑顔も披露と、多感なこじらせ男子を瑞々しく演じきりました。

ドラマの中で火事があった14年前は、宮藤官九郎が磯山プロデューサーと組み、「池袋ウエストゲートパーク」で、連ドラ初脚本を体験した2000年です。
磯山、宮藤、そして演出の金子文紀の初顔あわせ。その14年後、また、こんな傑作が誕生したことが喜ばしいです。

明けて本日22日は冬至。この日を境に日が長くなって春に向かうそうで、まさに、ごめんね青春!日和ですね。
本当にいっぱい面白かった。ありがとう、「ごめんね青春!」

あ。あと、番組FBによると「7話以降、尺がはまりきらずに泣く泣くカットした部分が少なくない」ので「DVDでは7話以降、ディレクターズカットでお届けしようかと今、鋭意、調整して」いるそうですよ。楽しみですね。(木俣冬)