「エルピス-希望、あるいは災い-」

映画「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年)で大きな注目を集め、「モテキ」(2011年)ではそれまでのイメージを覆す役柄に挑むなど、キャリアを重ねるごとに役柄の幅を広げてきた長澤まさみ

「コンフィデンスマンJP」シリーズでの軽妙なコメディから、映画「ロストケア」(2023年)でのシリアスな役柄まで、幅広い作品で異なる表情を見せてきた。

近年も、三谷幸喜監督の映画「スオミの話をしよう」(2024年)をはじめ、時代劇映画初主演となった「おーい、応為」(2025年)、「ドールハウス」(2025年)などの主演作が続き、2026年11月27日には主演映画「このごにおよんで愛など」の公開も控えている。

女優としてますます円熟を見せる長澤が、仕事にも自分自身にも自信を失ったアナウンサーの揺れ動く心情を演じたのが、2022年に放送された連続ドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」だ。実在する複数の事件に着想を得て制作され、社会派エンターテインメントとして高い評価を受けた。

■長澤まさみの出演作品をチェック

長澤まさみが繊細に体現する、失意のアナウンサーがたどる再起の物語 社会派エンタメ「エルピス-希望、あるいは災い-」
長澤まさみが「正義」と「葛藤」の狭間で揺れる主人公を泥臭く体現した「エルピス-希望、あるいは災い-」
長澤まさみが「正義」と「葛藤」の狭間で揺れる主人公を泥臭く体現した「エルピス-希望、あるいは災い-」

©カンテレ

長澤が演じるのは、かつてはゴールデンタイムのニュース番組でサブキャスターを務めるエースアナウンサーとして活躍していた浅川恵那。ところが、路上キス写真を週刊誌に撮られたことで番組を降板し、現在は深夜の情報番組「フライデーボンボン」のコーナーMCを担当している。

心身ともに疲弊し、食事をしても吐いてしまう日々を送りながら、周囲には愛想笑いを浮かべ、なんとか仕事をやり過ごしている。かつての輝きを失い、報道の世界からも距離を置こうとしていた彼女の前に、ある事件をめぐる疑惑が持ち込まれる。

長澤まさみが繊細に体現する、失意のアナウンサーがたどる再起の物語 社会派エンタメ「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」

©カンテレ

恵那のもとに、同じ番組の若手ディレクター・岸本拓朗(眞栄田郷敦)が、10代の女性が連続して殺害された過去の事件をめぐる冤罪疑惑を持ち込んでくる。当初は事件に関わることを拒んでいた恵那だったが、犯人とされ死刑が確定した男の冤罪を訴える人々の声に触れ、少しずつ事件と向き合い始める。

取材を進める中で次々と浮かび上がってくる矛盾と、その先に立ちはだかる組織の論理。恵那は拓朗とともに事件を追っていくうちに、報道を伝える仕事に携わる者として、そして一人の人間として、自分が何を信じるのかを改めて問い直していく。

長澤まさみが繊細に体現する、失意のアナウンサーがたどる再起の物語 社会派エンタメ「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」

©カンテレ

本作で印象的なのが、浅川恵那の内面の変化を細やかに表現する長澤の演技だ。

物語の序盤に登場する恵那は、かつてエースアナウンサーだった面影をほとんど感じさせない。背中を丸め、どこか虚ろな目で周囲を眺め、理不尽なことがあっても愛想笑いを浮かべて受け流す。

この時の長澤は自信を失った恵那の疲弊を、表情や姿勢、声のトーンにまでにじませている。眠れない夜を過ごした恵那が、夜明け前の街を一人で走る姿からも、行き場のない感情を抱えながら、なんとか自分自身を保とうとする孤独が伝わってくる。

長澤まさみが繊細に体現する、失意のアナウンサーがたどる再起の物語 社会派エンタメ「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」

©カンテレ

一方、拓朗から持ち込まれた冤罪疑惑をきっかけに、自ら事件を調べ始めると、その表情にも少しずつ変化が生まれていく。事件関係者の話を聞く時には相手の言葉を逃すまいと視線を向け、納得できない事実を前にすると、戸惑いや苛立ちが表情に浮かぶ。

それまで何事にも距離を置こうとしていた恵那が、自ら考え、問いかけるようになっていく。その過程を、長澤はわずかな目つきや声色の変化によって丁寧に描いている。

もちろん、事件に関わり始めたからといって、恵那が突然強い人物へと変わるわけではない。怖気づき、迷い、時には感情を露わにする。そうした弱さを隠さないからこそ、恵那の姿には生々しい人間らしさが感じられる。

長澤まさみが繊細に体現する、失意のアナウンサーがたどる再起の物語 社会派エンタメ「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」

©カンテレ

共演者との掛け合いも、長澤演じる恵那の人物像を浮かび上がらせている。

恵那を冤罪疑惑へと引き込む若手ディレクター・拓朗を演じるのは眞栄田郷敦。空気を読まずに恵那へ食い下がる拓朗と、それを面倒がってかわそうとする恵那のやり取りにはコミカルな瞬間もあり、やがて事件をともに追う中で変化していく2人の距離感にも注目したい。

一方、恵那の元恋人で報道局のエース記者・斎藤正一を演じる鈴木亮平との場面では、また違った表情を見せる。かつての恋人同士ならではの親密さを残した会話がある一方で、それぞれの立場や考え方の違いも垣間見え、長澤と鈴木の抑制された掛け合いが独特の緊張感を生み出している。

長澤まさみが繊細に体現する、失意のアナウンサーがたどる再起の物語 社会派エンタメ「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」
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©カンテレ

さらに、番組チーフプロデューサー・村井喬一役の岡部たかしをはじめ、三浦透子華村あすから個性豊かなキャストの存在も、テレビ局という組織の独特な雰囲気や物語に漂う不穏な空気を際立たせている。

そして、本作を語るうえでもう1つ見逃せないのが、各話で少しずつ変化していくエンディング映像だ。第1話では、情報番組のMCを務める恵那が笑顔でケーキ作りをする姿が映し出される。しかし、そこで待っているのは予定調和とは程遠い光景だ。テレビの中で求められる"浅川恵那"と、そこから少しずつ外へ踏み出していく彼女自身との対比を思わせる、印象的な映像になっている。

ここで流れるのが、Mirage Collectiveの「Mirage」。STUTSが音楽プロデュースを手掛ける音楽集団による主題歌で、長澤自身もボーカルとして参加している。映像と音楽の両面から本編とはまた違った作品世界を楽しませてくれるのも見どころの1つだ。

長澤まさみが繊細に体現する、失意のアナウンサーがたどる再起の物語 社会派エンタメ「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」
「エルピス-希望、あるいは災い-」

©カンテレ

冤罪疑惑を軸に、報道に携わる人々の葛藤や組織の論理を描きながら、一度立ち止まらざるを得なかった人間が、再び自分の意志で歩き出そうとする姿を映し出す「エルピス-希望、あるいは災い-」。浅川恵那の揺らぎを丁寧に積み重ねる長澤まさみの演技に注目してほしい。

文=HOMINIS編集部

放送情報

エルピス-希望、あるいは災い-
放送日時:2026年9月8日(火)20:00~
チャンネル:ホームドラマチャンネル 韓流・時代劇・国内ドラマ(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

出演:長澤まさみ 眞栄田郷敦 三浦透子 岡部たかし 筒井真理子 鈴木亮平 ほか

最新の放送情報はスカパー!公式サイトへ

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