2026年6月7日、中国メディアの第一財経は、人工知能(AI)が雇用を単純に奪うものではなく、真の課題は社会が技術の進歩に適応できるかにあるとする評論記事を掲載した。

記事は華中科技大学知識産権・競争法センターの鄭友徳(ジョン・ヨウダー)氏による評論を紹介した。

鄭氏は、AIの急速な発展により、人間が機械に取って代わられるという雇用終末論が広がった一方で、技術の実装が進むにつれ「AIは仕事の性質を変えるものであり、単純に雇用を消し去るものではない」という理性的な見解が示されるようになったとした。

そして、ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)が、今後10年間でAIが自動化できる仕事量は労働時間の約25%に相当するものの、ツールの高度化が仕事の複雑化を招くため、人間の職を奪うには至らないと述べたことに言及した。

また、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOも、最近の企業の解雇はAIではなく管理や戦略上の調整によるものだと指摘し、OpenAIのサム・アルトマンCEOも「仕事における対人的な相互作用や人間味はAIで代替できない」と認めるなど、3人のテックリーダーがAIをあくまで「人間を補完するもの」と捉えているとした。

鄭氏は、AIが仕事に参画するようになった現代において、仕事の総量は固定されており、誰かの仕事が増えれば別の誰かの仕事が失われるという「労働量固定の誤謬」を打破すべきだと指摘した。

その根拠として、米ベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツのデービッド・ジョージ氏の分析を紹介。ジョージ氏が歴史的にも技術革新はコストを下げて新たな需要や職業を創出したとし、実際に企業がAIを代替ではなく補強ツールとして扱う頻度は大幅に増加しているとの認識を示したことを伝えた。そして、実際の開発現場でもAIによる能力拡張の恩恵は顕著で、ソフトウェア開発の雇用は成長を続けていると論じた。

鄭氏は、シカゴ大学のアレックス・イミス教授が、AIは定型的な認知タスクを処理する一方で、人間には判断力や感情的な交流といった非弾力的な需要がより求められるようになると指摘したことに言及した。

そして、スタンフォード大学の研究でAI関与が高い職業の若年層就業率が約16%低下したことや高い実装コストなど、AIと雇用を巡る課題はあるとしつつ、実際の応用には技術的限界や組織の抵抗により数十年を要する見込みだと説明した。

さらに、米国マサチューセッツ工科大学のデービッド・オーター教授が「適切に運用されれば、AIが中間層の雇用活力を回復させる可能性もある」との見方を示していることも紹介した。

鄭氏は最後に、将来の真の挑戦は雇用の総数が減るかではなく、AIの進歩の速さが社会の適応能力を超えるかどうかにかかっており、富の分配や人材育成体系の再設計、人間独自の価値である責任や共感の重要性が、将来の労働市場を決定づける核心になると結んだ。(編集・翻訳/川尻)

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