夏合宿特集の第2回は、16年ぶりの箱根駅伝優勝を狙う早大。新潟・妙高高原などで夏合宿を行っている。

駅伝シーズンに向けて厳しい練習を続けるチームを、私立文系最難関と言われる政治経済学部の小平敦之(4年)が抜群のリーダーシップで引っ張っている。スポーツ推薦、あるいはアスリート推薦で入学したスポーツ科学部の選手以外が早大の駅伝主将を務めるのは17年ぶり。来春の卒業後は引退し、総合商社に就職する小平は、競技者としてラストサマーを全力で駆け抜けている。

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 妙高高原スポーツ公園で行われたスピード練習で、早大は箱根駅伝優勝を目指す力と気概を見せつけた。3キロ2本と6キロ1本(一部選手は3キロ3本)。学生で唯一、MGC(28年ロス五輪マラソン日本代表選考会、27年10月)の出場権を持つ工藤慎作(4年)は最後の6キロをチーム最速の16分48秒で走破。「令和の三羽ガラス」と呼ばれる増子陽太、新妻遼己(はるき)、本田桜二郎のスーパールーキーも設定タイムより速く走り切った。

 今季の早大は戦力が充実している。今年1月の箱根駅伝で1区7位の吉倉ナヤブ直希(3年)、3区8位で今季急成長の山口竣平(3年)、4区区間賞の鈴木琉胤(るい、2年)、5区3位の工藤、6区6位の山崎一吹(4年)、10区10位の瀬間元輔(3年)ら好選手がそろう。

 そして、昨年12月の全国高校駅伝1区(10キロ)で区間賞の増子(福島・学法石川)、同2位の新妻(兵庫・西脇工)、同3位の本田(鳥取城北)が今春、そろって入学した。

 能力と個性豊かな選手がそろった今季の早大を率いる主将が小平だ。早大の政経学部で学ぶ秀才ランナーは「学生駅伝3冠が期待されているので、達成したい。

全員が主役となるチームが理想です」と言葉に力を込めて話す。

 新チームが始動した1月以降、チームの全員と個人面談を重ねている。練習と学業で忙しい中、長い時間を要するが、小平は「新たな発見があって、面白いです」と笑顔で語る。

 「小平は人望が厚い」と花田勝彦監督(55)は全幅の信頼を寄せる。主将とともにチームをまとめる高尾啓太朗主務(4年)は「小平はチームビルディング(メンバーの能力を最大限に引き出す組織作り)が最高にうまいです」と絶賛。盟友の工藤は「(チームをまとめることは)小平に一任して、僕は伸び伸びとやらせてもらっています」と感謝している。

 2023年、早大系属校の早実から内部進学。1、2年時は箱根駅伝の登録メンバー16人に入れなかったが、3年時に飛躍した。全日本大学駅伝で学生3大駅伝デビューを果たし、5区7位。箱根駅伝では9区で歴代4位となる1時間7分45秒の好記録で区間2位と力走した。

 スポーツ推薦、あるいはアスリート推薦で入学したスポーツ科学部の選手以外が早大の駅伝主将を務めるのは、2009年度の尾崎貴宏(秋田中央高から自己推薦で教育学部入学)以来、17年ぶり。昨季主将の山口智規(現SGH)には「(スポーツ、アスリート推薦入学以外の)一般組の選手が強い時、早稲田は強いから、頑張れ」と激励を受けたという。

 事実、一般入学組の“たたき上げ”の選手が、いぶし銀の活躍をした時の早大は強い。2011年の箱根駅伝は福島・会津高から一般入学した猪俣英希(当時4年)が初出場の5区で、東洋大の「2代目・山の神」柏原竜二(当時3年)と激闘を演じ、その差を最小限に食い止めたことで早大に3冠をもたらした。8区3位と好走した北爪貴志(当時4年)は、小平にとって早実の先輩で恩師でもある。

 千葉・柏二中時代、競技エリートだった。千葉県大会の3000メートルで、現チームメートの工藤(三田中)に競り勝ち、優勝した。しかし、早実3年時は南関東大会で5000メートル14位で全国高校総体に出場できず。一方の工藤(千葉・八千代松陰)は同レースで2位となり、全国高校総体でも10位と活躍した。「工藤とは中学2年生の頃からの知り合いです。高校生の時には工藤に追いつけるようになりたい、と思っていました。今も工藤の練習を見習いたいと思っています」と小平は語る。

 学生ラストシーズンにかける思いは強い。今年4月の関東学生対校選手権1部ハーフマラソンで4位と健闘した。

「最後の箱根駅伝では9区を走り、区間新記録(22年、青学大・中村唯翔、1時間7分15秒)を狙いたい。あるいは、アンカーの10区で優勝のゴールテープを切りたいですね」と意気込みを明かす。

 卒業後は、競技の第一線から退く。「僕が目指していたのは箱根駅伝でした。卒業後は社会人としてゼロからスタートしたい。競技の世界は工藤に任せます」と爽やかに話した。

 練習、学業と並行し、就職活動を行い、総合商社から内々定を得た。「発展途上国に貢献する仕事をしたいです」と文武両道ランナーは目を輝かせて語る。箱根駅伝の理念「箱根から世界へ」を競技とは異なる道で実現しようとしている。

 最後の箱根駅伝を走った後、フルマラソン挑戦も予定している。競技生活は残り約半年。「来年、走らない日が寂しいと感じると思います」と柔らかな笑みをたたえて話した。

 競技者として最後の夏。小平は走って、走って、走る日々を過ごしている。(竹内 達朗)

◆小平 敦之(こだいら・あつゆき)2004年4月14日、千葉・柏市生まれ。22歳。柏二中3年時に県大会3000メートルで工藤慎作に競り勝ち、優勝で全国大会出場。早実3年時に南関東大会で5000メートル14位。23年に早大政経学部入学。3年時に学生3大駅伝でデビューし全日本5区7位、箱根9区2位。今年の関東学生対校選手権1部ハーフマラソン4位。自己記録は1万メートル28分59秒94、ハーフマラソン1時間1分54秒。179センチ、62キロ。

◆今季の早大 4位だった前回の箱根出場メンバー10人のうち8人が残る。

前回5区3位の工藤、同6区6位の山崎一吹(いぶき、4年)を擁する山の特殊区間に強みを持つ。前回まで3年連続でエース区間の2区を担った山口智の後継は同4区区間賞の鈴木琉胤(るい、2年)が最有力。同3区8位で今季急成長した山口竣平(3年)も「下級生に2区を任せるわけにはいきません」と意欲を示す。レースの流れを決める重要な1区は、同7位と好走した吉倉ナヤブ直希(3年)を筆頭に「令和の三羽がらす」の増子、新妻、本田の新人も候補に挙がる。

 チーム最大の目標は箱根の総合優勝。そのためには開幕戦の出雲駅伝(10月)が鍵を握る。OB会長の瀬古利彦さん(70)は「スピード駅伝の出雲で勝って勢いをつけたい。3冠取った時もそうだった」と期待を込めてエールを送る。

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