じゃあ21世紀の「働く小学生」像はどうなるのか? 仕事に勤しむ小学生少女を描いた作品は現在もたくさんあります。今回はその中から、もー健気でかわいくて、しかも物語としても面白い二冊をご紹介します。
え? 小学生が働いたらダメだろうって? まあ、あれです。ファンタジーです。
一冊目は横山知生の『私のおウチはHON屋さん』。働いているお店はなんとエロ本屋。わーお。
お父さんがエロ本ばっかり娘に読ませていたため、すっかりその手の本に詳しくなってしまった小学五年生の少女みゆ。とはいえ思春期になると幼い時と違って羞恥心がわき「もう店番したくない!」とキレるのも当然。お母さんも愛想をつかして出ていってしまい、今は二人で店を切り盛りしています。お父さんがまたいいかげんな性格なので、ぶっちゃけ店の大黒柱になっているのは小学生のみゆという有様です。
少女がエロ本を売っているというシチュエーションだけでも笑えるし、恥じらう姿にも萌える漫画なのですが、これが驚くほど熱血! エロに対して嫌悪感だったり照れだったりが強い幼い少女です、配達中も「今死んだら万引きやエロい子って思われる!」とパニクったりもするんです。
けれども、男性たちのエロ本を愛する気持ちがいかに尊いかを、彼女は誰よりも分かっているんです。エロ本を求めている人の心を店員として最大限の努力で迎える姿は、まさに働く女の子! 特に常連さん達の性的嗜好を理解した上で、エロ本ソムリエのとして頑張る姿は、笑えつつも応援したくなります。
やめたいと願いながらも、成人向け書店員としての誇りをもち、力いっぱい働くみゆの姿が眩しい作品です。
二冊目はあさのゆきこの『夕焼けロケットペンシル』働いているお店は、田舎の町でよく見かける、開いているのかいないのか分からないボロボロの文房具屋さん。21世紀だと、文具店という響き自体がレトロになりつつありますね。
こちらの父親はさらに輪をかけてダメオヤジ。日がな一日ネットやゲームに明け暮れて全く仕事をしません。とはいっても小学生の少女サトミは、出て行った母親を待つために、仕事放棄しているオヤジに取ってかわって、この店を経営することになります。小学生で経営なんて出来るのか!?
こちらはリアル色が強く、子供には過酷すぎるお店経営の現実にスポットを当てた作品です。問屋さんには「お店屋さんごっこ」と言われ、売れそうな商品もほとんどない。未来はあまりにも暗く重い! だけど彼女は頑張ります。お母さんはきっと帰ってきてくれる。
もー健気すぎて読んでいて苦しくてならないのですが、頑張る人は報われるもので。この店にスクリーントーンを定期的に買いに来る漫画家の青年らに励まされ、今日もシャッターを開けるのです。
読みすすむうちに「健気でかわいい」という上から目線ではなく、サトミの熱い思いにシンクロしていくのがこの漫画の面白さ。応援しつつも、頑張らなきゃ!と自分のことのように感じます。そして漫画家の青年に対する淡い思いも……女の子だもんね。
その他にも様々な「働く小学生漫画」を下記のリンクに並べてみました。これらの作品群、20世紀らしい人情味に加えて、お客さんへの誠実さを含んだお仕事漫画の味わいが強く、笑いながらしみじみとできます。
キャラに萌えつつ、仕事に燃える! これが21世紀の「働く少女」達の姿なのです。(たまごまご)