「【艦これ白書の誤植について】「艦これ白書」(角川マガジンズ10/18発売)に、空母→戦艦などのお大きな誤植と幾つかの写真ミスが確認されています…とても残念……楽しみにしていた提督方には本当に申し訳ありません。近々に角川マガジンズさんから何等かお知らせがあると思います。」(「艦これ」開発/運営Twitterより)
「楽しみにされていた提督の皆さん…大変申し訳ありません。」(「艦これ」開発/運営Twitterより)

艦これ開発スタッフの悲痛な謝罪が痛い。

と言っても、開発スタッフが本を作ったわけではないのですが。

『艦これ白書 艦隊これくしょんオフィシャルブック』の誤植で、ファンの間では大荒れです。
どこが誤植や写真ミスなのかはオフィシャルでお詫びが出ています。
「艦これ白書 −艦隊これくしょん オフィシャルブック−」(2013年10/18発売)に関するお詫び
8の艦船の史実写真の掲載ミス、キャラクター名の「戦艦」「正規空母」の間違いなどです。
裁断が荒い、というニュースも見ましたが、僕の持っているのはきれいなのでそこは今回は考えないことにします。

逆にいえば「それってそんな大騒ぎするようなことなの?」「そもそも本の中身どうなのか知らないんだけど」という人の方が現在は多いはず。

実際この本の中身はどうなのか、このミスがなぜ大騒ぎになったのかを見てみます。

●お初だし情報
この本の最大の価値だと思っているのは、イラストレーターと声優の公表です。
今までネット上では一部のキャラしか声優が公開されておらず、イラストレーターも明記されていませんでした。
それが全て公開された、というのは評価に値すると思います。
特にこういうタイプのゲームって、なかなか名前が公開されません。
他からの引き抜きの懸念なのかわかりませんが、これってファンには惜しいんです。
だってその人を知りたいし、絵をもっと見たいんですもの。
名前が表記される、というのは本当に大事なこと。その絵師さんにとっても。
その点、よく踏み切ってくれました。

●艦娘紹介は……?
気になる中身ですが、基本的にほとんどのページが艦娘の紹介になっています。
1ページに一人、艦娘の全身写真と小さい中破絵、ステータス、ゲーム的なフレーバーテキストが掲載され、下4分の1に史実の船の解説が入っています。

史実との組み合わせで写真入りというのは、いいと思います。
なぜなら、艦娘がなぜその砲を背負っているのか、どういうギミックが史実から採用されているのかが比較できるからです。
長門などのページは特に凝っており、初期設定画が掲載されています。これを見るとあの長門のツノみたいなのはなんなのか、頭にあるのはどういう意味があるのかがわかり、ニヤリとできます。
これこれ。こーいうのでいいんだよ。


と、そう思っていました。

●問題の部分
問題になるのはここからです。
史実艦の写真が全ての艦娘に添えられているのですが、これが間違ってしまっている。
このゲームが「艦船を愛する人」が作って「艦船を愛する人」がプレイしていることを考えるとクリティカルなミスです。
間違っているのは駆逐艦で、「不知火」「陽炎」など。
掲載されているのはまさかの、第一次大戦時の方の艦の写真。
二次大戦時の艦をモチーフにしたゲーム作中のものとは別の船です。
むしろこの辺り、ネットで検索すればすぐ写真出てくるので、逆に間違えるほうが難しいくらいのウルトラCなのですが、これは笑って済ませられませんでした。
長州力の写真と長州小力の写真を間違えるくらいのミスです。

キャラクター名のところの正規空母と戦艦の間違いくらいなら「あーやっちまったねハッハッハ」と笑って済ませたいところ。すぐわかりますし。もちろんよくないけど。

しかし、史実写真のミスがこの本の急づくり感を露呈してしまい、多くのファンが首をかしげる結果になってしまいました。

●内容についての疑問
一番最初に書いたように、褒めるべき部分は多い本です。
今まで艦これ関連の本を買ったことがない人なら、特に艦娘については満足できる内容はしっかり入っています。
しかし、問題なのは「それ以上ではない」というところです。

ゲーム中の絵の素材自体かなり少ない作品です。それをどう見せるかは本当に難しい。
難しいのですが、そこを頑張って欲しい、というのは読者の強い願いです。
長門・陸奥・夕張は初期設定画が1ページ割いて挿入されており、本当に面白い。そうそうこれこれ! これが見たかったのです!
しかし、この三艦しか設定画は載っていません。いくらなんでも少ない。
描きおろしイラストも何艦か入っています。青葉は見開きでデータと描きおろしイラストで構成されていて、実に素晴らしい。
でも、青葉だけなんです。
どうして他の艦でやらなかったんだろう。なぜもっと初期設定画を載せなかったんだろう。
史実を載せるならもっと載せて欲しい。海戦の元ネタ、旧日本海軍の解説も入れて欲しかった。
ゲーム攻略とかを全て捨てて、艦娘紹介に徹底するのはとてもいいと思います。でもそれならもっと……。
悪くないけど、物足りなく、とても歯がゆい本になってしまいました。

イラストレーター情報、新規描き下ろし絵、史実とのリンク、上坂すみれインタビュー……いいところホントいっぱいあるんです。
最新の艦は収録されていないけど、それでもギリギリまで突っ込んだのも評価はしたい。
ただ、中途半端。ムダなページが多いのもネック。艦娘紹介で力尽きてプラスアルファがない。
求めていたものは本を作った人の「愛」だったのに。

コンプティーク10月号の付録が高く評価され、再版までされたのは、作っている人達の艦これ大好き愛が溢れていたからでした。
編集者達が提督として、熱くこのゲームへの愛を語っていたし、データだけじゃなく史実のウンチクも盛りだくさん、ネットの話題も拾うくらいのパワーに溢れていました。

今回の白書にその熱意が感じられず、ありえない間違いをしてしまったというのは、「これから繰り広げられる艦これビジネス」に対しての提督(プレイヤー)達に、強い警戒心を産みました。
自分も紙媒体に携わる身として、記事の間違いは背筋が寒くなるほど恐ろしいものなので、なんか理由でもあるのかなーと一瞬考えました。
でもねー……。艦船写真を最大のキモとして作っている本です。そこはテヘペロってわけにはいかなかったんです。

これから続々と艦これ関連本出てきます。
艦これは単体ではお金を稼ぐシステムにほとんどなってないので、このような関連本・グッズでお金を稼いでいくことになります。
提督達は、よいものに対しては、ちゃんとお金を払います。好きだからです。
だからこそ、杜撰に作られたものや、ブームに乗っただけのものには、ものすごく厳しいです。
単にあげ足取りたいわけではないんです。お金をはらうのが惜しいわけでもないです。中には「それならゲームでドック解放課金してくる」という人もいるくらいですから。
焼畑農業になってほしくない、長く続くコンテンツになってほしいから、良い物をじっくり提供して欲しい。

本当に、このゲームで本をつくるの難しいと思います。絵が極端に少ない。じゃあどうするか?
どんどん描きおろすか、史実を交えるか、攻略とからめるか。
今回の艦娘紹介なら、イラストレーターさんか運営スタッフに、艦娘ごとのコメントを聞いて入れるだけで全然違う情報本になったはず。
ぼくは設定画が見たいです。あるいは史実に詳しい人による、艦娘と史実艦の比較解説が読みたいです。プレイ日記もみたいです。イラストレーター、特に敬愛してやまないしばふさんの話聞きたいです。大量にあるネットの話題も融合させてほしいです。シミュレーションゲームとしての角度からの話も語って欲しいです。
いろいろやりかたはあると思います。

本自体は悪くはない「艦これ白書」。描き下ろし絵は素晴らしいです。表紙の吹雪ちゃんだけでも価値はあります。
でももう、艦娘並べるだけでは商売にならない、というのを明白にした本でもあります。
お願いです、是非、是非とも、楽しい、心ワクワクするような、提督達の心を高揚させる愛のこもった艦これ本を、これから作ってください。
お願いです。

(たまごまご)