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江藤淳は不勉強、大江健三郎の政治的発言は凡庸。小谷野敦の筆舌はもう、とまらない

2015年6月19日 10時50分 ライター情報:枡野浩一
小谷野敦さんの本をおすすめする記事の第二弾ですが、この第二弾だけ見てくださっても問題ありません。前回と今回どちらも、先に私一人のおしゃべり動画を撮影してから原稿を書いています。前回の動画、機材の不調により話の途中で終わってしまい、すみませんでした。動画の中で思いださせなかった人名は、本当に、思いだせなかったのです。思いだしては、忘れてしまいます。
そして今回の動画中に、まちがい発言がありました。新書『21世紀の落語入門』(幻冬舎新書)は小谷野さんから送っていただき、すでに一度以上読んだことがありました。おわびし、訂正します。自分の脳が怖いです。
『21世紀の落語入門』小谷野敦/幻冬舎新書




読みやすい『江藤淳と大江健三郎』


動画の中で話したように、体調が悪くてもつい読んでしまうほど面白い『江藤淳と大江健三郎』(中央公論新社)。私が付箋を付けた部分をいくつか挙げさせていただきます。「→」のあとは私自身の感想コメントです。
『江藤淳と大江健三郎: 戦後日本の政治と文学』小谷野敦/筑摩書房

p.180《大江には通俗物語作家的な才能があり、(略)それを評価しなければ、ディケンズもバルザックも評価できないことになるだろう。》
 →小難しい印象しかない大江さんの小説を読んでみたいと思わせる記述が本書には多い。

p.189《大江の政治的発言が、小説の達成に比べて凡庸に過ぎるとは、かねてから言われることだが、残念なことは、その二つを分けて前者を正統に評価する批評家があまりいなかったことで、たいていは政治的に大江に同調する。》
 →小谷野さん自身はこの二つを分けて考えるための仮説をいくつか本書に書いています。ここには書きません、読んでみてください。

p.222《その時の大江はノーベル賞作家だから、自作の批判は許さない狭量さだと噂されたものだが、それはやはり匿名が許せなかったからであろう。匿名批判が卑怯だというのは、私にとっては自明なことなのだが、世間の人はそうは思わないらしい。》
 →批判だから許さなかったのではなく、匿名での批判だったから許せなかったのだろう、という指摘は納得。私も小谷野さん同様、匿名批判は卑怯だと当たり前のように感じているのですが、そう書いたら炎上したことがあります

p.231《『洪水はわが魂に及び』についての大江のこの文章を読んで、暴力に魅力を感じる人間がいるのだ、ということに気づいた。(略)だが、戦後社会では、暴力はいけないことになっている。》
 →小谷野さんは「暴力に魅力を感じる人間がいるのだ」ということに、わざわざ気づくような人間で、そのへんに共感します。

ライター情報

枡野浩一

歌人。1968年東京生まれ。小説『ショートソング』(集英社文庫)ほか著書多数。短歌をとりいれた自主映画制作や漫才などにも挑戦中。阿佐ヶ谷「枡野書店」店主。

URL:https://note.mu/masuno

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