若干4歳にしてパパをいじることを覚え、お店やさんごっこをすれば渋いシーンを切り取り、笑いに対してストイックな姿勢を見せる幼稚園児──。『芸人と娘』(尾関高文著、飛鳥新社刊)は、芸人である尾関高文さん(ザ・ギース)と現在5歳の娘さんとのエピソードを綴った一冊だ。
このおもしろいエピソードはどんなふうに生まれたのか? また、文中に挟み込まれている尾関さん作のキャラ弁をめぐる夫婦のやりとりとは? 著者の尾関さんに話を聞いた。
キャラ弁をめぐる夫婦間の"契約"とは『芸人と娘』ザ・ギース尾関高文に聞く
「芸人と娘」飛鳥新社刊
尾関高文(ザ・ギース)
イラスト:はるな檸檬
¥1,188(税込)

つい忘れてしまう子どもの言動を一冊に


───まず、この本が出版されることになったきっかけは?
尾関「僕が時々、自分のTwitter(@geeseojeck)に掲載していたものを、編集担当の畑さんが見つけてくださって、声をかけていただいたんです」
畑(編集担当)「僕が最初に尾関さんを知ったのは、キャラ弁だったんですよ。『芸人さんが娘さんにつくっているキャラ弁が話題になっている』と」
尾関「『つくってる弁当が変だ』って記事ですよね(笑)」
「ギースの尾関さんが娘のために作るお弁当がちょっと変だ」(Excite Bitコネタ)
キャラ弁をめぐる夫婦間の"契約"とは『芸人と娘』ザ・ギース尾関高文に聞く
尾関高文(ザ・ギース)
1977年、広島県出身。明治大学在学中にお笑いの道を歩みはじめ、04年、高佐一慈とザ・ギースを結成。08年、15年キングオブコント決勝進出。コンビとしての活動のほか、大ファンである広島カープ関連の仕事でも活躍。恐竜にも造詣が深い。

「そうです(笑)。それで尾関さんのTwitterを拝見したら、キャラ弁もさることながら娘さんとのやりとりが面白かった。こちらを一冊にできるんじゃないか、とご相談したんです」
尾関「たまに、メモ代わりに子どものことを載せていたんですよね。子どもの何気ない言葉が面白くて、うまくコントになったりしないかな、という気持ちもあったりして」
───切り取られているエピソードのひとつひとつが、とてもおもしろいですよね。
尾関「子どもの言動って、すごくおもしろいのに放っておくと忘れちゃうんです。
『なんだったっけな、すごくおもしろいこと言ってたのにな』ってことがよくあったので、書き留めるようにしました。本のお話をいただいてからは、ネタを本のほうに回すためにTwitterには載せなくなってしまいましたけど(笑)」
キャラ弁をめぐる夫婦間の"契約"とは『芸人と娘』ザ・ギース尾関高文に聞く
子どもの言動って、すごくおもしろいのに放っておくと忘れちゃうんです

───それぞれのエピソードに添えられたはるな檸檬さんのイラストもすてきです。
「はるなさんの読書エッセイ漫画を読んで、これはきっと尾関さんの文章にも合うだろうなって」
尾関「僕も『ZUCCA×ZUCA』を読ませていただいていたので、うれしかったですね」
キャラ弁をめぐる夫婦間の"契約"とは『芸人と娘』ザ・ギース尾関高文に聞く
「芸人と娘」飛鳥新社/尾関高文(ザ・ギース)イラスト:はるな檸檬
より

芸人の娘(5歳)のお笑い観


───それにしても、娘さんの言動が大人びていたり、思いがけない角度のものだったりするのは、やはりお父さんである尾関さんが芸人さんだからというのもあるんでしょうか?
尾関「いや、芸人だからってこともなくて、たぶんどこの家庭のお子さんもすごくおもしろいことを言ってるはずなんですよ。どのお子さんも家族を笑わせてる。でも、日々の子育てに追われてそういう一瞬を流してしまう部分ってあると思うんです。実際僕もそうでしたし。だから、この本を『うちの子もこんなおもしろいところがあるな』って気づくきっかけにしてもらえたらすごくうれしいなと思います」
───ちなみに、娘さんはお父さんが芸人さんであるということはご存知なんですか?
尾関「はい。
最近、テレビにはお笑いというジャンルがあって、パパがそういう、お笑いと呼ばれる種族の人なんだっていうことをやっと意識し始めたかな、という感じですね」
───種族(笑)。本の中にも娘さんが漫才を観て「この人達は落ち着きがないね」と言うというエピソードが出てきましたが。
尾関「お笑いに対する娘なりの考察があるみたいですけどね。でも、これもどこのお子さんでも思ってることなのかもしれません」
キャラ弁をめぐる夫婦間の"契約"とは『芸人と娘』ザ・ギース尾関高文に聞く
パパがそういう、お笑いと呼ばれる種族の人なんだっていうことをやっと意識し始めたかな

───ザ・ギースのコントを観ることは?
尾関「ありますよ。といっても子どもなので、突然大声を出すとか、変な動きをするとか、そういうコントの一部を観て笑ってますね。全体を観て『いい設定だね』って言ったりはしないです(笑)。
世界観はまだ伝わってないですね。それはしょうがないです」

キャラ弁をめぐる夫婦間の"契約"


───さっきもお話に出ましたが、尾関さんはずっと娘さんにキャラ弁をつくっていらっしゃるんですよね。本にもいくつか登場していますが。
尾関「キャラ弁をつくるとすごく喜んで、『きょうは何?』って楽しみにしてくれたり、『○○くんがいいって言ってくれたよ』って感想を話してくれたりするんですよ。でも、幼稚園のかばんがリュックタイプなんですけど、入れた瞬間に『いってきます!』ってガンガンに揺らしながら走ってく。『ああ、ダメダメ!』って思うんだけど、それは止められないじゃないですか」
───たしかに(笑)。
尾関「だから一応持って行く前に『きょうのお弁当はこれだよ』って見せるようにしてるんです。
幼稚園のバスまで毎朝僕が送るんですけど、お弁当が崩れるのがいやだから、僕がそーっとかばんを持っていったりします。でもバスがきて、かばんを背負った瞬間結局ガンガン振るんですけど(笑)」
キャラ弁をめぐる夫婦間の"契約"とは『芸人と娘』ザ・ギース尾関高文に聞く
『きょうのお弁当はこれだよ』って見せるようにしてるんです

───お弁当自体は娘さんが幼稚園に入られてすぐつくるようになったんですか?
尾関「はい。もともとは、夫婦の役割分担を話し合った中にその項目がありまして」
───項目。
尾関「とくにうちは共働きというのもあるので、あまり妻に負担をかけられないんです。とは言いつつ、仕事の関係でどうしても僕のほうがやらなくなってしまうので、その取り決めというか、奥さんが納得できるラインを二人で探って、『娘の弁当は僕がつくります』『朝、子どもを送ります』と」
───ご夫婦で話し合いを持たれた。
尾関「はい。
僕もそうやって取り決めをつくるのが嫌いではないので。それで一応契約がまとまりまして、そのうえで夫婦がうまくいっているといいますか」
───ちなみに、ほかの家事分担は?
尾関「基本的に僕は帰りが遅いので、夜は奥さんが子どもの面倒をぜんぶみてくれているんですよ。だから僕がいるときは家のことはすべて僕がやる。子どもの面倒もそうですし、時間があるときは掃除も洗濯もやります」
───すごい。そこまでやる旦那さんは貴重ですね。
尾関「いやー、僕の場合、奥さんに対して『結婚してもらえてありがたい』という気持ちがあるんですよ。
芸人という仕事の僕と結婚してくれて、苦労をかけて申し訳ないので……。その点は、ふつうの家庭の方とはちょっと違うのかもしれません」
キャラ弁をめぐる夫婦間の"契約"とは『芸人と娘』ザ・ギース尾関高文に聞く
奥さんに対して『結婚してもらえてありがたい』という気持ちがあるんですよ

『芸人と娘』第2弾は1年後にスタート?


───娘さんはこの3月に幼稚園を卒園されたんですよね。
尾関「はい。無事に卒園して、4月から小学校です。下の娘が2歳で、来年幼稚園に入るんです。だから1年お休みしたあと、またお弁当づくり再開ですね」
───卒園式は、感慨深かったのではないですか?
尾関「もちろん感動はしましたけど、下の娘を抱っこして参加して、彼女が泣き叫ぶたびに外に出たりしていたのであまりちゃんと見られなかったです(笑)」
───では次は、下の娘さんとの『芸人と娘』第2弾をたのしみにしています。
尾関「そうですね(笑)。がんばります」
(釣木文恵)

後編・お弁当づくり実践編に続く

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お知らせ


THE GEESE(ザ・ギース)
第11回単独ライブ
「トロピカリア」

出演:高佐一慈・尾関高文 (ザ・ギース)
作・演出:向田邦彦/ザ・ギース

日時:2016年6月28日(火)         19:00
29日(水)         19:00
30日(木)         19:00
7月 1日(金)         19:00
2日(土)  14:00  18:00
3日(日)  14:00  18:00
全8回公演 (開場は開演の30分前)

会場:上野ストアハウス
         台東区北上野1─6─11イルドビルB1

チケット:4月23日(土)一般発売
イープラス 
チケットぴあ 0570─02─9999

料金:3500円(税込) 整理番号付自由席
※未就学児入場不可

お問合せ:株式会社アッシュ・アンド・ディ・コーポレーション
03─5456─8130  
主 催:ASH&D