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交通安全教室でなぜ腹話術?

年末年始はお酒を飲む機会が多い。飲酒運転は「しない、させない」が浸透しつつあるがそれでも油断は禁物。先日、知人がお酒を飲んで酔い加減で歩いているところを車にはねられた。この時期、車を運転する人だけでなく車を運転しない人も交通安全には充分気をつけていただきたいものだ。

ところで交通安全と聞いてすぐに思い浮かぶものに腹話術がある。
実はこれ昔から不思議に思っていたのだ。小学校や幼稚園で行われる交通安全教室では必ずといっていいほど警察官が腹話術をする。ちょっと前ならいざ知らず、今では子どもの興味を引きそうなものはたくさんあると思うのだが。
警察では毎年、腹話術の技術を競うコンクールを行っているほどある意味、力を入れている。

その理由はどこにあるのか、正面を切って警察庁の広報室に問い合わせてみた。
「腹話術の理由ですか? えっと実はこの件に関しては警察庁では把握していないんです。交通安全指導に関しては都道府県でまちまちなのでいつ取り入れ始めたのか、何でなのか、といった資料はないんです。具体的な指導の仕方や内容などは警察庁が通達を出しているわけではないので、腹話術を使いましょうとすすめているわけではないんです」

そんなぁ、全国コンクールまで開いているのにわからないとは。
次に警視庁にも問い合わせるも「いやぁ、そういうことは気にもしていませんでした。そういえば何でかな?」とのことで、あまりにも当たり前のこととなってしまっているからなのか、詳細はわからなかった。

そこで、今度は逆に腹話術師さん側にアプローチ、NPO法人日本腹話術師協会にお話を聞いてみた。
代表の池田武志さんが日本における腹話術の歴史から丁寧に教えてくれた。

「腹話術の定義は、視覚と聴覚の錯覚の芸(術)といえます。そこで、いろいろな見解があると思います。日本でも古代から呪術や交霊術として腹話術のようなものは存在していたようです。ただし腹話術という言葉が用いられるようになったのは昭和になってからのことのようです。現在のような人形を抱えて行うエンターテインメントとしての腹話術は、米国の映画俳優で腹話術師のエドガー・バーゲンが1938年に出版した『腹話術のやり方』に端を発しているようです。この本が出版された年、東宝の泰豊吉氏がこれを日本に持ち帰り、当時日劇のオペラ歌手であった澄川久に渡したとされています。1941年の東宝名人会のプログラムに澄川久が腹話術を実施したという記録があります」

どうやら日本における腹話術師の登場はそんなに古いの話ではないらしい。
またこの頃、エドガー・バーゲンの映画「紹介状」(1938年)、「正直者は騙せない」(1939年)も日本で上映され、これに触発された古川緑波、花島三郎、ミルクブラザースの川田晴久ら複数の芸人たちが真似をしたことで、同時多発的に広まっていったのではないか、という説もある。

では、警察が腹話術を交通安全に取り入れるようになったのは?

「当協会の発足は2000年5月ですが、当協会の名誉顧問で元警察官の『健ちゃん愛好会』代表の村田康仁朗先生が、警視庁警察官時代の1950年代に交通安全指導のために腹話術を用いていらっしゃったようです。これが評判となり、あっちでもこっちでも是非教えてほしいと、徐々に増えていったそうです。それ以前にも丸の内警察署などで花島三郎氏が警察で教えていたということですが、警察の資料としては残っておりませんでした」

う〜ん、やはり警察関係の資料がないのでこれ以上のことを知るのは難しいが、交通安全指導に腹話術が使われるようになったのはおよそ50年以上前といってよさそうである。
さらに池田さんは交通安全を学ぶ上でなぜ腹話術が有効なのかを教えてくださった。

「交通安全教育に限らず、教育として腹話術が利用されるのは単に人形がいると楽しいから、人形との会話がわかりやすいというだけでなく、人形を使うことによって子どもと同じ目の高さの関わりになり、教えたいことを子どもが受け入れやすくなる雰囲気が作れることにあります。子どもを直接諭すのでなく、人形を諭すことによって間接的に子どもを諭すことができるというのがポイントです」

私は単純に子どもの注意を引くために人形を使っているのかと思っていたのだが、それ以上に深い理由があったのには驚き。
子どもは教えられている人形を見て優越感を持つそうで、場合によっては子どもに優越感を抱かせることで「自分もできるんだ」という自信を与えることにもなるという。

「人形を使うことによって、視覚的な効果がとても大きくなります。ユーモアの中に、興味、関心、集中力、印象づけがアップします。また、強力なコミュニケーション・ツールである腹話術は、自分対人形、そして観客と、キャラクターのギャップが、共感や真理を生み出し、伝達力が増幅され数倍のパワーで、発信、受信が可能となるわけです」

交通安全指導に腹話術が取り入れられている理由はちゃんと存在していた。
池田さんによると、協会では現在も東京都内全警察署の交通安全指導担当婦人警察官100数名を指導しているとのこと。
さらにこの腹話術、アメリカなどでも幼児教育、障害児教育、麻薬防止等の啓蒙、キリスト教の伝道、心理療法など様々な分野に応用されているという。
ちなみに、日本の交通安全指導者は女性警察官が担当しているが、米国では男性の警察官やシェリフが腹話術による防犯、防災、交通安全教育を担当しているそうだ。

腹話術が本当にこんなに奥深いものだとは正直驚きました。芸が連綿と続くのは人の心を掴むそれなりの理由があるからこそのようです。もちろん、エンターテインメントとしての腹話術も健在。浅草の東洋館、浅草演芸場などでプロの公演が行われている。
また、全国各地にあるアマチュアの腹話術サークルも発表会・公演やサークル活動を行っているので興味のある方はぜひ足を運ばれてみてはいかが?
(こや)

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2007年1月7日のコネタ記事

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