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ロシア革命の幻影は世界中のリベラルな知識人を欺いたが、根源的左翼の中からボリシェヴィズムにノンを突き付けたのはフランスではシモーヌ・ヴェイユしかいなかった。
そのヴェイユの言葉を集めた新しい箴言集が出た。
“革命の幻想とは、次のように考えることである。力の犠牲者たちは、現に起こっている暴力については無実なのだから、もしその彼らに力を握らせれば、彼らはそれを正しく使うだろう、と。しかし、少なくとも聖性に近い者を除いては、犠牲者たちもまた、加害者と同じように、力によって汚されている。剣の柄にある悪は、そのまま剣先へと伝わる。そのため、権力の頂点に押しあげられた犠牲者は、そうした変化に酔ってしまい、同じかそれ以上の悪を行って、すぐに転落するのだ。”
パスカル『パンセ』の現代版といっていい。
【書き手】
鹿島 茂
フランス文学者。元明治大学教授。専門は19世紀フランス文学。1949年、横浜市生まれ。1973年東京大学仏文科卒業。
【初出メディア】
週刊文春 2025年9月25日
【書誌情報】
シモーヌ・ヴェイユ まっすぐに生きる勇気著者:鈴木 順子(編訳)
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
装丁:文庫(208ページ)
発売日:2025-08-22
ISBN-10:4799332015
ISBN-13:978-4799332016