『地中海都市の空間人類学』(古小烏舎)著者:陣内 秀信Amazon |honto |その他の書店
青い空と青々とした海にはさまれた地中海。そこに広がる地中海都市を語らせれば、本書の著者以上にふさわしい人はいない。
アルプス以北から広まった近代都市は、碁盤目型・放射状のごとく全景が見事で機能的な美しさがあっても、人間本来の空間への欲望や愛着が捨て去られている。だが、西洋建築史を彩る様式はほとんど地中海圏を源泉としており、そこには独特な迷路をもつ都市が育まれてきた。その空間をさまよえば、さまざまな驚きと発見があり、心地よく感覚を刺激し、身体のリズムにも共鳴するという。

地中海都市のバザールは小さな店がびっしりと並ぶ集積度の高い商業空間の迷宮である。だが、建物の中庭に入ると喧騒(けんそう)から逃れ、落ち着いた雰囲気につつまれる。水と緑をとり込んだ居心地のいい中庭はまさしく「地上に楽園を実現する」という理想がある。中庭型の住宅が連なる市街地は中東では前二〇〇〇年ころにさかのぼり、家族のプライバシーを守るためことさら重要であった。

イタリアに始まる著者の都市探究は、イスラーム圏にも及び、地中海文明としての空間人類学の開明に至り、今なお創見にあふれている。

【書き手】
本村 凌二
東京大学名誉教授。博士(文学)。1947年、熊本県生まれ。1973年一橋大学社会学部卒業、1980年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。
東京大学教養学部教授、同大学院総合文化研究科教授を経て、2014年4月~2018年3月まで早稲田大学国際教養学部特任教授。専門は古代ローマ史。『薄闇のローマ世界』でサントリー学芸賞、『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞、一連の業績にて地中海学会賞を受賞。著作に『多神教と一神教』『愛欲のローマ史』『はじめて読む人のローマ史1200年』『ローマ帝国 人物列伝』『競馬の世界史』『教養としての「世界史」の読み方』『英語で読む高校世界史』『裕次郎』『教養としての「ローマ史」の読み方』など多数。

【初出メディア】
毎日新聞 2025年10月4日

【書誌情報】
地中海都市の空間人類学著者:陣内 秀信
出版社:古小烏舎
装丁:単行本(ソフトカバー)(312ページ)
発売日:2025-07-30
ISBN-10:4910036075
ISBN-13:978-4910036076
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