青い空と青々とした海にはさまれた地中海。そこに広がる地中海都市を語らせれば、本書の著者以上にふさわしい人はいない。
地中海都市のバザールは小さな店がびっしりと並ぶ集積度の高い商業空間の迷宮である。だが、建物の中庭に入ると喧騒(けんそう)から逃れ、落ち着いた雰囲気につつまれる。水と緑をとり込んだ居心地のいい中庭はまさしく「地上に楽園を実現する」という理想がある。中庭型の住宅が連なる市街地は中東では前二〇〇〇年ころにさかのぼり、家族のプライバシーを守るためことさら重要であった。
イタリアに始まる著者の都市探究は、イスラーム圏にも及び、地中海文明としての空間人類学の開明に至り、今なお創見にあふれている。
【書き手】
本村 凌二
東京大学名誉教授。博士(文学)。1947年、熊本県生まれ。1973年一橋大学社会学部卒業、1980年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。
【初出メディア】
毎日新聞 2025年10月4日
【書誌情報】
地中海都市の空間人類学著者:陣内 秀信
出版社:古小烏舎
装丁:単行本(ソフトカバー)(312ページ)
発売日:2025-07-30
ISBN-10:4910036075
ISBN-13:978-4910036076