『ローマ帝国とアフリカ-カルタゴ滅亡からイスラーム台頭までの800年史』(中央公論新社)著者:大清水 裕Amazon |honto |その他の書店
地中海の地図を広げると、左下の沿岸地域が北アフリカ。前二世紀半ばまで、この地の現チュニジアを中核にして覇権をふるったのが海洋大国カルタゴである。
北アフリカは穀物栽培に適した地域であり、ローマ帝国支配下にあっても、首都ローマ一〇〇万人が食べる穀物の三分の二を供給できるほどだったという。現在と異なり、適度な降雨もあり、良好な土壌に恵まれていたらしい。その繁栄ぶりは三世紀ごろの大邸宅の一角に描かれた壮麗なモザイク画からも浮かび上がってくる。農作業や田園風景を彩る豊かさはまさしく「ローマの平和」を象徴するかのようである。

ローマ市民権保持者も元老院議員も増加し、五賢帝後の二世紀末には、とうとう北アフリカ出身の皇帝セプティミウス・セウェルスすら登場する。彼は威厳にあふれた顔立ちだったが、口にするラテン語からはアフリカ訛(なま)りが抜けなかったという。

さらに、古代末期には最大の教父アウグスティヌスも北アフリカ生まれであり、この地で生きていた。

地名から僻地(へきち)と思われがちだが、属州アフリカはローマ帝国を支える国力を備えていたことを思い起こさせる好著。

【書き手】
本村 凌二
東京大学名誉教授。博士(文学)。1947年、熊本県生まれ。1973年一橋大学社会学部卒業、1980年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。
東京大学教養学部教授、同大学院総合文化研究科教授を経て、2014年4月~2018年3月まで早稲田大学国際教養学部特任教授。専門は古代ローマ史。『薄闇のローマ世界』でサントリー学芸賞、『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞、一連の業績にて地中海学会賞を受賞。著作に『多神教と一神教』『愛欲のローマ史』『はじめて読む人のローマ史1200年』『ローマ帝国 人物列伝』『競馬の世界史』『教養としての「世界史」の読み方』『英語で読む高校世界史』『裕次郎』『教養としての「ローマ史」の読み方』など多数。

【初出メディア】
毎日新聞 2025年10月18日

【書誌情報】
ローマ帝国とアフリカ-カルタゴ滅亡からイスラーム台頭までの800年史著者:大清水 裕
出版社:中央公論新社
装丁:新書(256ページ)
発売日:2025-08-21
ISBN-10:4121028716
ISBN-13:978-4121028716
編集部おすすめ