◆2025年「この3冊」
◇<1>フランチェスカ・スコッティ、北代美和子訳『亀たちの時間』(現代書館)
◇<2>クローディア・グレイ、不二淑子訳『『高慢と偏見』殺人事件』(早川書房)
◇<3>ジョン・スタインベック、青山南訳『チャーリーとの旅 アメリカを探して』(岩波書店)
<1>はすばらしい短編集。研ぎ澄まされた言葉と写真のように鮮明な描写力で、人生の豊かさと一回性、とり返しのつかなさを浮かびあがらせる。
一編ずつはとても短いのに、深く長く余韻が残る。切れ味と詩性を堪能した。

<2>はジェイン・オースティン好きにはたまらないミステリー。きわめて丁寧につくられていて、機知に富む。六冊分のオースティン作品の登場人物に再会できたようでたのしい。そこに殺人事件が発生するのだから、興趣の尽きることがない。ファニーが初めて夫への怒りに気づいたりもして、現代的な味つけもされている。

<3>は新訳で、行き届いた訳注の塩梅(あんばい)が最高。クラシックな名作だけれど不思議なほど新鮮で、居ながらにして土地と時間両方の旅ができる。

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『亀たちの時間』(現代書館)著者:フランチェスカ・スコッティAmazon |honto |その他の書店
江國 香織「2025年 この3冊」
『高慢と偏見』殺人事件
『『高慢と偏見』殺人事件』(早川書房)著者:クローディア・グレイAmazon |honto |その他の書店
江國 香織「2025年 この3冊」
チャーリーとの旅──アメリカを探して
『チャーリーとの旅──アメリカを探して』(岩波書店)著者:ジョン・スタインベックAmazon |honto |その他の書店

【書き手】
江國 香織
1964年、東京生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞社主催「小さな童話」大賞を受賞。89年「409ラドクリフ」でフェミナ賞。
『こうばしい日々』で91年産経児童出版文化賞、92年坪田譲治文学賞。同年『きらきらひかる』で紫式部文学賞。99年『ぼくの小鳥ちゃん』で路傍の石文学賞、02年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、04年『号泣する準備はできていた』で直木賞、07年『がらくた』で島清恋愛文学賞、10年『真昼なのに昏い部屋』で中央公論文芸賞、12年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、15年『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』で谷崎潤一郎賞を受賞。「つめたいよるに」「神様のボート」「すいかの匂い」「東京タワー」「なかなか暮れない夏の夕暮れ」など著書多数。小説以外に、詩作、エッセイ、童話、海外絵本の翻訳も手がける。

【初出メディア】
毎日新聞 2025年12月13日
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