◇<1>押川 典昭『プラムディヤ・アナンタ・トゥールとその時代』上・下(めこん)
◇<2>細川 瑠璃『フロレンスキイ論』(水声社)
◇<3>村田 優樹『ウクライナの形成 革命期ロシアの民族と自治』(東京大学出版会)
<1>二〇世紀インドネシアを代表する国民的作家の生涯を描いた大作。長年研究に打ち込んできた著者のライフワークである。
<2>の主人公はスターリン時代の粛清に倒れた司祭。哲学・数学・宇宙論・美学・工学と何でもできた万能の天才だったが、その思想は極めて難解で時に奇抜。文理両面に通じた著者が見事に解明した。
<3>ウクライナ民族主義者とロシア自由主義者の相互関係を丹念に掘り起こし、両民族共存の道がいかに探られたかに焦点を当てた。敵対と憎しみばかりが強調される現代に啓示の光を投げかける。
<2><3>は三〇代の若手研究者のデビュー作。世代交代の爽やかな風だ。
『プラムディヤ・アナンタ・トゥールとその時代』(めこん)著者:押川 典昭Amazon |honto |その他の書店
【書き手】
沼野 充義
1954年東京生まれ。東京大学卒、ハーバード大学スラヴ語学文学科に学ぶ。2020年7月現在、名古屋外国語大副学長。2002年、『徹夜の塊 亡命文学論』(作品社)でサントリー学芸賞、2004年、『ユートピア文学論』(作品社)で読売文学賞評論・伝記賞を受賞。
【初出メディア】
毎日新聞 2025年12月20日