◆2025年「この3冊」
◇<1>河野 龍太郎『日本経済の死角』(筑摩書房)
◇<2>大西 康之『修羅場の王』(ダイヤモンド社)
◇<3>渡辺 利夫『大いなるナショナリスト 福澤諭吉』(藤原書店)

<1>は日本で長期にわたり不況が続いた理由として、企業が過剰に貯蓄し設備に投資しないことを挙げる。実質賃金は上がっていないが日本の生産性は上がっているという矛盾に注目し、「収奪」の内実を明るみに出す。


<2>は債権者・債務者を含むすべてのステークホルダーに粘り強く納得を求め、「法的整理の鬼」と呼ばれる倒産弁護士によるJAL倒産劇を追う。「失敗したらケジメつけてやり直すのが健全な資本主義」なのだとすれば、倒産を先送りする悲観主義が投資に対する悲観の原因とも言える。

<3>は、国家の独立を守る精神の根源を武家社会の士風、士魂に求めたのが福澤諭吉だったとする斬新な福澤論。武士階級を無情に切り捨てた日本が帝国主義者の側に立つ道を選んだのも、排除される側への共感を失ったからなのか。

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『日本経済の死角 ――収奪的システムを解き明かす』(筑摩書房)著者:河野 龍太郎Amazon |honto |その他の書店
松原 隆一郎「2025年 この3冊」
修羅場の王 企業の死と再生を司る「倒産弁護士」142日の記録
『修羅場の王 企業の死と再生を司る「倒産弁護士」142日の記録』(ダイヤモンド社)著者:大西 康之Amazon |honto |その他の書店
松原 隆一郎「2025年 この3冊」
大いなるナショナリスト 福澤諭吉
『大いなるナショナリスト 福澤諭吉』(藤原書店)著者:渡辺 利夫Amazon |honto |その他の書店

【書き手】
松原 隆一郎
1956年兵庫県神戸市生まれ。東京大学工学部都市工学科卒業。同大学院経済学研究科博士課程修了。 東京大学大学院総合文化研究科教授を経て、2018年4月より放送大学教授、東京大学名誉教授。武道家としても知られる。著書に『ケインズとハイエク』『日本経済論』『分断された経済』『経済学の名著30』『消費資本主義のゆくえ』『失われた景観』『武道を生きる』『経済政策―不確実性に取り組む』『森山威男 スイングの核心』など。

【初出メディア】
毎日新聞 2025年12月20日
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