『界』(文藝春秋)著者:藤沢 周Amazon |honto |その他の書店

◆日本の土地に根ざす物語
藤沢周の最新短篇(ぺん)集。「月岡」「千秋」「指宿」「化野」……と続く小説は、日本の土地に根ざした物語になっている。


とはいえ、藤沢作品にお馴染(なじ)みの、中年男の哀愁や疲労は健在だ。男は東京に残してきた女のことをどこかで気にしながら、目の前に広がる風景に心奪われる。酔いしれる。

たとえば「指宿」。知覧の特攻平和会館でみた、若い兵隊たちの残した言葉が主人公の脳裡(のうり)に甦(よみがえ)り、小説の行く先に影を落とし始めるのだ。旅行に誘った若い女からは同行を拒まれ、主人公は死とエロスのあわいを漂っていく……。

旅先の古典芸能が小説に奥行きを与えている。藤沢周は作家として円熟の境地に達しつつあるのでは?

【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。


【初出メディア】
日本経済新聞 2015年5月21日

【書誌情報】
著者:藤沢 周
出版社:文藝春秋
装丁:文庫(203ページ)
発売日:2019-04-10
ISBN-10:4167912562
ISBN-13:978-4167912567
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