◆2つの島で全感覚を解放
管啓次郎の書く文章に接すると、自分の感覚のどこかが確実に刺激されるのがわかる。それは、たぶん、管が自分の全感覚を開放して、自然や動物に向き合っているからだろう。
本書には、二つの島の滞在記が収められている。ハワイと蘭嶼(らんしょ)。ハワイはいいとして、蘭嶼ってどこ?という方がほとんどだろう。引用する。
「台湾の南端に近く、台東からは1ダースほどの乗客しか乗れない定期便の飛行機で、わずか二十五分で着いてしまう」ところにあり、「曇っていれば正確に灰色、晴れていれば正確にトルコ石の青をした海に」浮かぶ「恐いほど濃密な緑の島」らしい。
管は二つの島で、見たこともない魚に出会い、激しい気候の変化にぶつかる。どこか懐かしい人々と会話し(言語に対する耳の柔軟さが素晴らしい)、おいしい食べ物に感動する。
大袈裟(おおげさ)な旅行記ではない。行きたい島に出かけ、そこで感覚を開放し、呼吸する。散文詩のような文章もある。素朴な味わいのある筆致だ。
途中に挟まれている数十枚の写真が、本当に魅力的。
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2015年2月4日
【書誌情報】
ハワイ、蘭嶼著者:管 啓次郎
出版社:左右社
装丁:単行本(218ページ)
発売日:2014-12-24
ISBN-10:4865281193
ISBN-13:978-4865281194