ケルト人の世界はしばしば古くて神秘的なヨーロッパの基層文化といわれる。だが、ケルト文化は「近代に創設された伝統」が多い。
“ICCAVOS.OP
PIANICNOS.IEV
RV.BRIGINDONI
CANTALON”
ローマの書体を借りた碑銘は「オピアノスの息子、イカウオスが、カンタロンをブリギンドナに捧(ささ)げた」と訳される。古代ケルト語は、S(主語)、V(動詞)、O(目的語)の語順だが、中世以降のケルト諸語ではVSOの語順になっているらしい。例外や変遷があり、音韻・文法・語彙(ごい)などで、印欧諸語と異なる特徴を共有しているが、そこに住む人々が「ケルト人」「ケルト民族」などのまとまりをなしていたわけではない。人間の文化は異なる集団とふれ合い、混ざり合っているが、この文化移転はケルト文化の変容に典型的に見られ、歴史上の好例をなす。
【書き手】
本村 凌二
東京大学名誉教授。博士(文学)。1947年、熊本県生まれ。1973年一橋大学社会学部卒業、1980年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学教養学部教授、同大学院総合文化研究科教授を経て、2014年4月~2018年3月まで早稲田大学国際教養学部特任教授。専門は古代ローマ史。
【初出メディア】
毎日新聞 2026年3月14日
【書誌情報】
ケルトとは何か著者:原 聖
出版社:講談社
装丁:単行本(248ページ)
発売日:2025-12-11
ISBN-10:4065420261
ISBN-13:978-4065420263