『ケルトとは何か』(講談社)著者:原 聖Amazon |honto |その他の書店
ケルト人の世界はしばしば古くて神秘的なヨーロッパの基層文化といわれる。だが、ケルト文化は「近代に創設された伝統」が多い。
祭祀(さいし)者のドルイドも神秘な妖精のハロウィーンも同類であり、古代から継承されてきた言語こそがケルト文化の核心をなす。ケルト諸語からなる文化圏のなかに現フランスにあたるガリアがあり、古代ガリア語碑文もある。

“ICCAVOS.OP
PIANICNOS.IEV
RV.BRIGINDONI
CANTALON”

ローマの書体を借りた碑銘は「オピアノスの息子、イカウオスが、カンタロンをブリギンドナに捧(ささ)げた」と訳される。古代ケルト語は、S(主語)、V(動詞)、O(目的語)の語順だが、中世以降のケルト諸語ではVSOの語順になっているらしい。例外や変遷があり、音韻・文法・語彙(ごい)などで、印欧諸語と異なる特徴を共有しているが、そこに住む人々が「ケルト人」「ケルト民族」などのまとまりをなしていたわけではない。人間の文化は異なる集団とふれ合い、混ざり合っているが、この文化移転はケルト文化の変容に典型的に見られ、歴史上の好例をなす。

【書き手】
本村 凌二
東京大学名誉教授。博士(文学)。1947年、熊本県生まれ。1973年一橋大学社会学部卒業、1980年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学教養学部教授、同大学院総合文化研究科教授を経て、2014年4月~2018年3月まで早稲田大学国際教養学部特任教授。専門は古代ローマ史。
『薄闇のローマ世界』でサントリー学芸賞、『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞、一連の業績にて地中海学会賞を受賞。著作に『多神教と一神教』『愛欲のローマ史』『はじめて読む人のローマ史1200年』『ローマ帝国 人物列伝』『競馬の世界史』『教養としての「世界史」の読み方』『英語で読む高校世界史』『裕次郎』『教養としての「ローマ史」の読み方』など多数。

【初出メディア】
毎日新聞 2026年3月14日

【書誌情報】
ケルトとは何か著者:原 聖
出版社:講談社
装丁:単行本(248ページ)
発売日:2025-12-11
ISBN-10:4065420261
ISBN-13:978-4065420263
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