◆偉大な寄り道のエッセー
保坂和志さんのエッセイには、小説家の中の混沌を説明しようとする姿勢が見えて、こちらもちょっと身構える感じがあった。この新刊のエッセイにはその気配が薄い。
つまり、これは偉大な寄り道の本なのである。厖大(ぼうだい)な作家や映画や思想書や音楽の固有名と、それらについての短いが、的を射た保坂さんの意見が渦巻いて、私たちの前に現れる。ああ、また翻弄されているなぁと思うけれど、つい読んでしまう。癖になる一冊。
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2015年10月15日
【書誌情報】
遠い触覚著者:保坂 和志
出版社:河出書房新社
装丁:単行本(356ページ)
発売日:2015-09-15
ISBN-10:4309024084
ISBN-13:978-4309024080