◆「私」語り突き放す実験小説
自伝的要素いっぱいの長編小説。人気の劇作家が怒涛の実人生をフィクションの形で語っている。
実在の、それとわかる登場人物もさることながら、松尾スズキの造形する奇妙な登場人物たちが魅力的。それから小説にしか出来ないことが随所に仕掛けられていて、一種の実験小説になっていて、驚かされる。
彼の劇団「大人計画」の芝居を直接観たことのない人でも、じゅうぶん楽しめる。それくらい小説のクオリティが高いのだ。それに、いま流行の「私」語りの小説にうんざりしている人にも、是非、お勧めしたい。それにしても職業作家たちはどうしてかくも自分のことばかり書くようになってしまったのか。そうした風潮を笑い飛ばす快作。
【文庫版】
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2004年5月20日
【書誌情報】
宗教が往く著者:松尾 スズキ
出版社:マガジンハウス
装丁:単行本(426ページ)
発売日:2004-03-30
ISBN-10:4838713746
ISBN-13:978-4838713745