気持ちのよいエッセイ集。大げさな表現や何かにおもねるところがない。
著者は古書店主。店頭や本の買い取り先で見聞きしたこと、読んだ本のこと、そしてこれまでの人生のさまざまな瞬間について書かれている。東京で生まれ、横浜で育ち、神戸の大学を卒業後、何度かの転職の後、20年前に名古屋で古書店を開いたということが、本書を読んでいるうちにだんだんとわかってくる。
それぞれの話の転がり方が楽しい。たとえば「ランプと銭湯」と題された章。ある日、著者は買い取りの仕事の帰り道、新美南吉記念館を訪れる。そこから新美の作品「おじいさんのランプ」の話になり、朴順梨のルポルタージュ『離島の本屋』に登場する書店と元店主の話へとつながっていく。書物と書店の過去現在未来を考えさせられる。
また、別のところで著者は新刊書店と古書店の役割とペースを時計の長針と短針にたとえる。古書店の時間はゆっくりと流れる。書店は知らなかった本と出会える場所だが、古書店では何年も昔の、ときには何百年も昔の本と出会える。
【書き手】
永江 朗
フリーライター。1958(昭和33)年、北海道生れ。法政大学文学部哲学科卒業。西武百貨店系洋書店勤務の後、『宝島』『別冊宝島』の編集に携わる。1993(平成5)年頃よりライター業に専念。「哲学からアダルトビデオまで」を標榜し、コラム、書評、インタビューなど幅広い分野で活躍中。著書に『そうだ、京都に住もう。』『「本が売れない」というけれど』『茶室がほしい。』『いい家は「細部」で決まる』(共著)などがある。
【初出メディア】
毎日新聞 2026年4月4日
【書誌情報】
たまさかの古本屋 シマウマ書房の日々著者:鈴木 創
出版社:亜紀書房
装丁:単行本(ソフトカバー)(256ページ)
発売日:2025-12-09
ISBN-10:4750519006
ISBN-13:978-4750519005