かつては「不登校」といえば、担任が毎朝のように玄関先まで迎えに行く……そんな光景が一般的でした。しかし今、学校現場では大きな変化が起きています。


文部科学省が発表した最新の調査(令和6年度)によると、小学校における不登校児童数は13万7000人を超え、過去最高を更新。もはや不登校は「特別なこと」ではなくなっています。

そんな中、学校の先生たちは一人ひとりにどのような対応をしているのか。教室に来られない子どもの学びや居場所をどう守ろうとしているのか。現役小学校教師の松下隼司さんにお聞きしました。

▼【質問】令和の不登校対応では、どのようなことをしているのですか?

▼【回答】無理に登校させることをゴールにするのではなく、一人ひとりの背景に寄り添った「オーダーメイドの対応」を日々模索しています。

どういうことなのか、詳しく解説します。

■一律の対応はもう古い? 不登校への「寄り添い方」の新常識
不登校とひと言に言っても、全ての子どもに一律に同じ対応をするわけではありません。

病気なのか、友達や学校の先生との関係なのか、はたまた学校の雰囲気自体が嫌なのかなど、不登校の原因を一人ひとり明らかにしていく必要があります。中には、なんとなく行きたくないという子どももいます。

いかなる理由でも頭ごなしに「いいから学校に来なさい」というのではなく、まずは本人の気持ちを尊重し、その上で保護者とどのような対応を取るか相談、確認をしていきます。

不登校の中でも、朝起きられないという理由で学校に来られない子がいます。
そういう子どもの場合は、保護者に確認をとった上で、朝迎えに行ったり電話をしたりすることで、状況が改善する場合があります。

どのような対応をするにしても、保護者に確認して実行するというのが大原則ですが、ごくまれにご家庭となかなか連絡がつかないというケースがあります。そうした場合は、学校だけで抱え込まず、関係機関と連携してお子さんの安全や健康状態を慎重に確認することもあります。

■通知表に“斜線”は引きたくない……先生たちの評価への葛藤
コロナ禍にオンライン授業が全国で一斉に行われましたが、その経験が不登校対応にも役立っています。

私の勤務校では、学校に来られなくても、授業を配信することで一緒に授業を受けることができるようにしています。家からはもちろん、教室に入れないという子には保健室などに別室登校してもらい、そこから授業を聞けるようにしています。

その際、画面をオンにするかオフにするか、双方向で話せるようにするかどうかも事前確認のポイントです。画面が見えるようにするのはしんどいという子もいますから、一人ひとりのできる範囲で授業に参加してもらっています。

最近ではオンライン授業の回数や時間などもしっかり記録をとるようにしており、それを指導要録に記載するようになってきました。以前までであれば授業を欠席していることになっていた子も、学校で学習したという記録を残せるようになっています。

学校で購入したドリルやプリント類は保護者経由で本人に渡し、記入して教師に提出してくれたものは評価に反映します。

不登校だからといって勉強を全くしていないという子どもばかりではなく、各家庭でしっかりと学習を進めている子も多いです。
そういう子は学校としてもしっかり評価してあげたいと考えています。

ただ、体育などの実技系の教科を中心に、どうしても評価を付けられず通知表に“斜線”を引かざるを得ない項目もあります。そのような評価になる場合も、保護者に説明をしながら記入するようにしています。

■令和の先生が大切にする、アナログとデジタルの心の距離
学校には来られなくても、子どもたち同士はさまざまな形で交流を保っていることも多いです。

例えばSNSやオンラインゲーム。オンラインゲームを通して親交を深めている子どもも多いですし、対面では話せなくてもSNSなら友達と話せるというケースもあるようです。

近年、SNSやオンラインゲームのトラブルが問題視されていますが、大人の管理下で適切に活用すれば、子どもたちの関係を維持する有効な手段となります。

一方、お手紙というアナログな手法が再会へのきっかけになる場合もあります。クラスメイトから「○○さんにお手紙を届けたい」という声があがれば、まずは保護者に許可をとった上で本人に届けます。

お手紙1つをとっても、それが重荷になる子もいれば「みんなに自分のことを覚えてもらっている」と励みになる子もいます。

クラスメイトからの温かい思いや言葉だとしても、子どもによってはマイナスに働いてしまう可能性がありますから、目の前の子どもはどちらの方向に捉えるかを見極めるのが、教師や保護者の役割です。

■行事こそ、クラスメイトと自然に歩み寄るチャンス
また、年に何回かある学校行事も子どもたちをつなぐ大切な機会です。
「行事なら頑張って参加できそう」という子もいますから、その場合の参加スタイルを細かくヒアリングし、無理のない形での参加や見学を検討します。

学校行事に関しても、クラスメイトの働きかけや思いやりに助けられることが多いですね。

教師が「仲間に入れてあげてね」と促すのではなく、「今回は○○さんも来られそうだよ」と共有すると、「じゃあ、この係なら○○さんも参加しやすいかな」と自然に歩み寄る姿がよく見られます。

令和の不登校対応には決まりきったマニュアルはなく、一人ひとりに合ったオーダーメイドの対応をしていく必要があります。

しかし、教師がよかれと思って独りよがりな対応をしてしまうと、子どもをますます追い込んでしまうことにもなりかねません。

教師と保護者が密接に連携をとりながら、SNSやオンライン通話、ゲームなどを「心の窓口」として活用するのが、令和ならではの不登校対応といえるでしょう。 話を聞いたのは:松下隼司さん
大阪府公立小学校教諭。令和4年度文部科学大臣優秀教職員表彰受賞。令和6年版教科書編集委員。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクール文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門優秀賞などの受賞歴を持つ。新刊『がっこうとコロナ』(教育報道出版社)など著書多数。voicyで『しくじり先生の「今日の失敗」』を発信中。


この記事の執筆者: 大塚 ようこ
フリーランス編集・ライター。子育てや教育、夫婦問題、ジェンダーなどを中心に幅広いテーマで取材・執筆を行っている。

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