人間、家族がいても友達がいても、結局は一人で自分の孤独感を癒やすしかない。人に頼っても幸福感や充実感は得られないのだ。
それが分かっていてもなお、「この寂しさをどうしたらいいのか」と沈んでしまうときもある。

■突然帰宅しなくなった夫
30歳で結婚、32歳で娘を授かったものの4年後に離婚したアヤカさん(60歳)。原因は夫の心変わりだった。娘の七五三が終わったあとのある日、突然、帰宅しなくなった。勤務先に連絡しても折り返してこない。

「1週間くらいしてやっと帰ってきたんですが、『好きな人ができたのならはっきり言って』と言ってもそうじゃない、忙しいだけなんだと言い訳をする。そしてまた帰ってこなくなる。会社に乗り込んだこともあります。そのときは上司や先輩たちに説得されて戻ってくる。でもまた1カ月ほどたつといなくなる。その繰り返しでした」

そんな生活を1年以上続けて、アヤカさんの方が体調を崩した。もう別れよう。
そう決めたときアヤカさんの両親が立て続けに亡くなった。

「1カ月で2回もお葬式を出したんです。あのときは落ち込みました。夫はずっと私に寄り添ってくれた。でも両親の四十九日が終わると、またいなくなった。それならもっと早く離婚してくれればよかった。寄り添うかと思えば裏切る。でも離婚はしたくないと言う。そうやって何度も傷つけられて、娘が6歳になったとき、やっと離婚届にサインさせました。これ以上、こんな生活を続けていたら私が本当に壊れてしまうと思ったから、どうしてもサインしてくれと言って」

■何でも話せる関係になったのに……
慰謝料はもらわなかったが、養育費は毎月、給与から振り込んでもらった。だが娘に会いたいという連絡が来ても会わせない時期が続いた。元夫を苦しめたい気持ちがあったのだ。
それでも娘の小学校の入学式の日時は知らせた。

「入学式で泣いている夫を見て、なんだか私は白けてしまって。こういう人なんだから諦めようと思いました。それ以来、娘とは会わせるようになりました。娘が8歳のとき、夫は再婚したんです。離婚後、不倫相手とは別れたようで、別の女性とのできちゃった婚だった。しばらくは音信不通でしたが、あちらの子が無事に生まれてからは、時々会うようになりました」

好きというわけではないが、「元親戚」のような感覚で何でも話せる関係になった。それなのに元夫は、娘が大学に合格したその日に急逝した。

■娘が結婚して遠方に行ってしまった
離婚後、アヤカさんは必死に働いて生活を支え、娘を育ててきた。過労で倒れ、元夫の母親が娘を預かってくれたこともあった。

「元夫が急逝したのは本当に寂しかった。あちらに家庭があっても、友達として付き合うことができていたので。
いなくなったんだなと思うと胸がキリキリ痛みましたね」

娘は大学を出て就職、どんどん親離れが進んでいるのは理解していた。だが週末は一緒に出かけたりすることも多く、いつか完全に離れていくとは思えなかった。だが昨年夏、「結婚する」と言いだした。相手は北海道に住んでいる人で、娘は異動を希望、自分も北海道勤務ができるように会社に談判したという。それが通って、今年初めから北海道勤務となった。

「最初は夜が怖かった。しんとして誰の声もしない。たった一人になったんだという実感がありました。ようやく少し慣れてきましたけど、気付くと職場以外では誰とも話していないことが多いですね」

週末はほとんど出かけない。たまった家事を片づけなければとは思うが、考えてみれば一人暮らしではそう家事はたまらないものだ。作り置きの総菜も必要ない。せっかく自由になれたのだから、どこかへ旅行するとかしたかったことをするとか、何かないのと友人には言われるが、今まで子育てと生活に追われて貯金もあまりないので、今後のことを考えると無駄遣いはできないと感じている。


■今はたった一人
「正真正銘の天涯孤独だという友人に言わせれば、『あなたは骨を拾ってくれる人がいるじゃない』って。でも死後のことを考えても仕方ないですよね。現実問題として、私はたった一人で生活しているんだから。その彼女は一人に慣れっこだというけど、私はやはり寂しい。毎日が寂し過ぎて、どうしたらいいか分からなくなることもある。病気をしたらどうしようとかそういうことではないんです」

先日、定年退職を迎え、あと数年は嘱託として働くことにしたが、勤務は週4日となった。とにかく時間を持て余す。だがやるべきこともやりたいことも、今のところないのだ。

「もう用済みの人間なんでしょうね。自虐ではなく客観的にそう思う。でも、そう都合よくいなくなれるわけではないので生きるしかないんですけどね。孤独……私には本当につらい状況です」

一人が好きな人もいれば、好きではないが孤独に強い人もいる。
一人が嫌で孤独に弱いアヤカさんのような人は、彼女自身が言うように本当に心身ともにつらいだろう。だが、それでも生きていくためには「楽しいと思える何か」を見つけるしかない。時間はまだたっぷりある。見つけていく過程自体を楽しめる可能性も高いのではないだろうか。
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