レクサスの最上位モデルである、ラグジュアリークーペ「LC500」。そのオープンカーモデルは、乗り手にどのようなAMAZING EXPERIENCE (素晴らしい体験)を与えてくれるのでしょうか。
レクサスが日本に上陸したのは2003年のこと。20年以上が経過した今、街でスピンドルグリルにLのエンブレムをつけたSUVを見ない日はありません。SUVと限定したのは、2023年レクサスが販売した9万5000台のうち、SUVが占める割合は8割を超えているから。
輸入プレミアムブランドでトップの販売台数を誇るのはメルセデス。その数は5万1228台ですが、SUVの販売比率は4割程度。レクサスのSUV比率がいかに高いかということがお分かりいただけるかと思います。
それゆえ筆者も過去、幾度となくレクサスを試乗しレポートを寄稿しました。よくできていると感心する一方、ドイツ御三家と比べると「どこか退屈」と感じたのも事実。それはブランドが認知されてきた2010年代中頃から言われはじめ、今もあまり変わっていないように思っていました。
そんな同ブランドのトップモデルも退屈なのか? という検証が本稿のテーマです。
LC500が登場したのは2017年のこと。
コンバーチブルモデルが追加されたのは2020年のこと。国産唯一の4シーターとして、そしてラグジュアリーブランドのフラグシップとして独特の魅力を放ちます。
サイズは全長4770×全幅1920×全高1350mm。ホイールベースは2870mmで、車重2050kg。ライバルを考えると500~1000万円近く価格がアップしますが、BMWの8シリーズカブリオレ(全長4870×全幅1905×全高1355mm、車両重量2030kg)あたりでしょうか。
車両本体価格でいえば、サイズはひと回り小さくなりますが、BMWのM4 カブリオレやポルシェ911 カブリオレあたりでしょうか。とはいえ、好みのオプションを付けなければ、という条件がつきますが。
高性能エンジンと10段ATでグイグイ走らせる
オープンカーなので走りはキモチイイが……
エンジンは5000㏄のV型8気筒のNA(自然吸気)。レクサスLCには3.5Lのハイブリッドがありますし、それをマウントすることもできたでしょう。ですが、オープンカーは官能の乗り物。無粋な音が出るモーターは搭載したくなかったと考えます。ただ、発熱量はかなりのもので、ボンネットを開けた途端、すごい熱気……。
最高出力は 477PS(351kW)/7100rpm、 最大トルク55.1kg・m(540N・m)/4800rpmとロマンを覚えるスペック。残念なのは、このエンジンを搭載するのはLCとRC Fのみになってしまったということ。このパワーとトルクを10段ATを介して後輪に伝えます。そう、これだけのビッグパワーなのにFRなのです。クルマ好きなら、さらに心がときめきませんか?
ルーフの開閉はボタン1つでカンタン。走行中でも50km/h以下なら開閉可能です。15秒程度で開閉しますので、いきなり雨が降ってきても慌てることはありません。
オープンカーゆえ、荷室スペースが少ないのは仕方ありません。底が浅いこともあって、ゴルフバッグは1個入れば十分という印象を受けます。また、荷室にはウインドディフレクターが入っていて、それもまた荷室を圧迫しているようです。底板を取り外すとバッテリーが姿を現わしました。
ウインドディフレクターは、高速道路での風の巻き込みを軽減してくれます。
4シーターオープンなので後席は基本的には狭い!
ルーフ収納の関係から、後席の足元はかなり狭い印象。ヘッドレストがないのが少し気になるところです。この手のクルマのあるあるですが、乗降性はあまりよくありません。ですが前席シートが後席乗員の足に当たると、少し前へ移動するといった細かな配慮を感じました。
ホワイトレザーのシートが上質感を演出
さらにネイビーとの組み合わせがオシャレ
インテリアはホワイトレザーとネイビーのレザーコンビネーション。ホワイトレザーは汚れが目立ちやすく、またデニムの色移りがしやすいのが難点。ですが清潔感があり、女子ウケは良好で、唯さんもその1人。「素敵ですね。ネイビーというのもセンスがあっていいですね」と笑顔を見せます。
ステアリングホイールは3本スポークでパドルシフト付き。
センターコンソール周りに目を向けましょう。シフトレバーはプレイスティックタイプで、動きはトヨタ系そのもの。本革巻きで高級感があります。ルーフ開閉とドリンクホルダーにはフタがあり、収納している状態ではスッキリして好印象。アームレストはちょっと使い勝手が悪いのですが、その中にはUSB Type-AとUSB Type-Cの端子が2系統用意されています。
助手席のグローブボックスは意外にも容積があり、また裏側にはスエード調の布が取り付けられて高級感があります。
ワイヤレスCarPlayは非対応
マークレビンソンのオーディオは音が良すぎ!
インフォテインメントはトヨタそのものという印象。特別何か表示が変わることはありませんでした。スマートフォン連携もバッチリですが、ワイヤレスのApple Carplayには対応していないようです。
マークレビンソンが監修したカーオーディオシステムは、クローズド状態とオープン状態で、それぞれに適した音場になるようコントロールされているところにも感心。さらにクリアーなエンジンサウンドが楽しめるように、ルーフを閉じた状態で不要な周波数ノイズを低減するアクティブノイズコントロールも搭載しているとのこと。
シートはコンバーチブル専用品。それはデザイン面でヘッドレストにエンボス加工を施しただけでなく、座面設計もたわみ量を多くして乗り心地を改善しているという芸の細かさ。もちろん電動式です。そして、シートベルトホルダーはマグネット式で、使い勝手はかなり良い印象を受けました。
乗降性ですが、足抜けが少し悪いのです。また、ドアノブが飛び出すタイプなのはカッコいいのですが、ネイルが欠けるおそれがありますので、注意したほうがいいでしょう。
ペダルはレクサスらしくオルガン式。足元スペースはかなり広い印象を受けます。
ガソリンはハイオク専用。ちなみに燃費ですが、高速道路と一般道を半々で、リッター8kmくらいでした。
丁寧な作りで贅沢なクルマ
やはりオープンカーは雨より晴天が似合う
取材日は雨だったので、オープンドライブをあまり楽しむことができず。オープンカー好きの唯さんもちょっと残念そう。
動き始めて感じるのは「とても贅沢な車」ということ。高価な素材を使った贅沢さだけでなく、精神的に贅沢な気持ちになる、真のラグジュアリーさを覚えます。
とにかく仕事が細かく丁寧。ステアリングをはじめ、クルマに触れると指先が喜ぶ感覚があり、イイモノ感を実感します。レクサスが本当にやりたかったのは、こういう世界で、それはコストなどの制限で実現しえなかったのでしょう。その制限を取り払えば、レクサスはこういうクルマを作れるという証明になったといえそうです。
ライバル車のように官能さを訴求するものの、その味付けは薄め。一方、走りにおいてネガティブな想いにならない細かな部分までの気遣いは、ライバルをしのぎます。日本のラグジュアリーとはかくあるべき、という1つの提案です。LCが出てからコンバーチブル化するのに、3年の時間を擁した理由がよくわかります。
大排気量のV8エンジンは実に見事にしつけられ、普段は静かなのに4000rpmを超えたあたりから何かタガが外れ、澄んだ歌声をきかせます。フロントからソプラノのような吸気音、リアからはバリトンバスのような排気音が運転席で混ざりあい、ダイレクトにドライバーに伝えます。この感覚はターボエンジンでは得られない世界。しかもオープンカーで楽しめる!
バツグンの乗り心地の良さとか、圧倒的な加速感とか、それは良くて当たり前。その先の世界を見せてくれたことに感謝です。
「今までのレクサスに抱いていたイメージを変えるクルマでした。とてもイイですね」と唯さん。レクサスが日本に上陸して今年で20年。ついに「レクサスでなければ得られないラグジュアリー」と「退屈じゃないクルマ」が生まれたことを喜びたいと思います。
■関連サイト
モデル紹介――あらた唯
10月5日栃木県生まれ。ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技を勉強中。また2022年はSUPER GTに参戦するModulo NAKAJIMA RACINGのレースクイーン「2022 Moduloスマイル」として、グリッドに華を添えた。