◆明治安田J1百年構想リーグ▽第13節 浦和2―0川崎(29日・埼スタ)
かつて浦和サポーターを沸かせた「ワンダーボーイ」が、指揮官として絶望の淵にいたチームに光を灯した。浦和は川崎に2―0と勝利し、連敗を7で止めて8試合ぶりの勝ち点3をつかみ取った。
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わずか1日の準備期間で、田中監督は停滞していたチームに3つの明確な変化を加えた。
①閉塞感を打破した「10番」の抜てき
スコルジャ体制下でベンチ外も経験していたMF中島翔哉を今季初先発に起用。4―2―3―1のトップ下に入った中島は、左サイドから中央へ絞るMFサビオとともに、ライン間でボールを引き出し攻撃のタクトを振った。中島は試合後、新指揮官について「浦和のレジェンドですし、思いも強い。ただ(就任直後の)ミーティングでかむことが多かったので……リラックスできました」と笑った。田中監督の誠実さと浦和愛が、硬直していた選手たちの心を解きほぐした瞬間だった。
②理にかなった「配置」と「時間」の整理
戦術面ではビルドアップの構造を整理した。攻撃時、左サイドバックのDF長沼洋一が高い位置を取り、右サイドバックの石原広教が残る「3枚」で形を作った。さらに「自分がプレッシャーを受けてから味方にパスを出す」ことを伝え、あえて相手を引きつけることで、受け手となる味方に余裕(時間とスペース)を配る意識を再確認した。ロングボールに頼らざるを得なかった近戦とは一変し、敵陣深くへ前進するシーンを量産した。
③「意思の伝染」を呼ぶ守備
守備では戦術的な取りどころを細かく指定する代わりに、メンタリティーを強調した。「FWがバックパスを追う姿が、周りに『連動していいんだ』という勇気を与える。その迫力を求めた」。田中監督が説いたのは、データを超えた「意思の伝染」だった。その姿勢はチーム全体に波及し、終盤にサイドハーフが下がって5バック気味になっても、最後まで決壊することはなかった。
“解任ブースト”という言葉で片付けるのは容易だが、田中監督が施したのは、自信を失っていた選手たちに本来の持ち味を発揮させるための「適切なタスク」の再分配だった。26―27年のシーズン移行後に新設されるU―21チームの監督就任が内定しているため、田中監督がトップチームを率いるのは今季限りの予定だ。しかし、サポーターの熱を取り戻したこの一日は、一人の指導者のキャリアにおいて、数字以上の意味を持つ大きな転換点となった。(金川 誉)

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