3月24日、デマント・ジャパンはプレミアム補聴器「Oticon Zeal(オーティコン ジール)」の販売を国内で開始した。「NXT(ネクスト)」と呼ばれる新しいカテゴリーで、従来の耳あな型のCICと同程度の小ささでありながら、高度な機能を“All-in-Ear”(オールインイヤー:ほしい機能が耳に収まる)で実現したのが特徴だ。

 同日に開催された記者発表会では、新製品の優位性について、同社の日本法人トップとオーディオロジートレーニンググループのシニアトレーナーおよびデマント デンマーク本社のコマーシャルディレクターが詳しく解説した。
 当日は参加メディアにOticon Zealが貸し出され、参加者は会場内で配信される同時通訳音声をBluetoothの次世代音声規格「Auracast(オーラキャスト)」送信機から、各自が耳に装着したOticon Zealで聴取した。
●スティグマと呼ばれる心理的な障壁が補聴器の普及を妨げている
 1904年にデンマークで創業した世界的な聴覚ヘルスケアテクノロジーグループ、デマントの日本法人であるデマント・ジャパンは、旗艦ブランドの「Oticon(オーティコン)」をはじめ複数の補聴器ブランドを扱っている。3月24日に開かれた記者発表会に同席したヤール・フリース=マスン 駐日デンマーク王国大使は、「ライフサイエンス産業はデンマークのGDP成長エンジンの一つであり、対日輸出の約40%をライフサイエンス関連製品が占めている」と紹介。「オーティコン補聴器は日本の人々の『聞こえ』を改善するのに貢献できるだろう」と述べた。
 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会などの情報発信によれば、難聴は認知症の最大のリスク因子であり、難聴を放置することで社会生活に支障をきたすことがあるとされている。主催者挨拶に立った齋藤徹代表取締役社長は、「難聴を放置することはさまざまなリスクがあるにもかかわらず、日本の補聴器装用率は15.6%と低い。これは、欧米の3分の1程度の数字だ」と指摘。その背景には補聴器に対するスティグマと呼ばれる心理的障壁、社会的偏見、抵抗感やネガティブイメージなどがある、との見方を示した。つまり、大きな補聴器を耳に付けていると目立ち、高齢者に見られてしまう、と考える人が多いのである。
 そこで望まれるのが、目立ちにくいコンパクトな補聴器だ。補聴器には耳かけ型(本体を耳にかけるタイプ)と耳あな型(本体が耳穴の中に入るタイプ)があり、露出部が少ない耳あな型なら周囲の人にほとんど気付かれなくて済む。
ただ、これまでの小さい耳あな型では補聴器本体が小さいので搭載できる機能に限界があった。そのため「多機能・高機能」と「目立ちにくさ」を両立させることは難しかった。
 「このような難題への回答となるのが、“All-in-Ear”のOticon Zealだ」と齋藤社長。英語の「zeal」には「強い熱意」という意味があると説明した上で、「Oticon Zealは、聞こえの未来を変えたいというオーティコンの強い熱意が込められた製品だ」とアピールした。
 「私たちは、単なる耳あな型で充電式の新製品を作りたかったわけではなく真にゲームチェンジャーとなる製品を作りたかった。まさにこの思いからOticon Zealは誕生した」とデマント デンマーク本社のリッケ・ニールセン 補聴器事業グループ コマーシャルディレクターは語った。
 しかしながら、業界のリーディングカンパニーである、オーティコンの技術力をもってしても、小さい耳あな型補聴器に、耳かけ型並みの機能を盛り込むのは容易ではなかったようだ。開発に要した期間は「約7年」(齋藤社長)。ニールセン コマーシャルディレクターは「たくさんの機能を小さな耳あな型の補聴器に収めるには、カプセル化のための技術を開発する必要があった」と説明し、「その結果、時間は多少かかったが、妥協することなく、ユニークな製品を生み出すことができた」と振り返る。
●小さな本体に多機能・高機能を内蔵
 Oticon Zealの主な特徴として、デマント・ジャパンは「目立たない形状」「AIサウンド処理」「コネクティビティ(外部機器との通信性)」「充電式」「即日持ち帰り可能」の5点を挙げる。
 まず、Oticon Zealは耳穴に小さく収まるので、髪が短くても人に気付かれにくい。と説明するのは、同社の高橋礼美オーディオロジー トレーニンググループ シニアトレーナー。
使用者の耳の形に合わせて作る従来のオーダーメイドとは違った、新カテゴリーの「NXT(ネクスト)」のOticon Zealは既成品であるため、開発にあたっては「1500以上の耳で形状を検証し、コンピューターシミュレーションと装用試験を繰り返した」と高橋シニアトレーナーは語る。
 また、Oticon Zealには樹脂を固めて作る“カプセル化”という技術が採用されている。「内部を樹脂でコーティングすることで部品を高密度に配置でき、衝撃への耐久性も高まる」と高橋シニアトレーナー。その結果、コンパクトな補聴器にも関わらず「高度なAI搭載による優れた音質」「Bluetooth LE AudioやAuracastなどの無線技術に対応」「充電機能」といった多彩な技術を一台の補聴器で叶えることができたという。本体から伸びるアンテナは半円弧状になっていて、本体を耳にしっかり固定する役割を果たすとともに、このアンテナを引っ張って補聴器を耳から取り外すこともできる。
 さらに、Oticon Zealは使えるようになるまでの日数も短い。耳かけ型で使われている既成のドーム(補聴器の先端に取りつける“傘”)を取り付けて使うことができるが、このドームで十分な効果が得られる場合は、購入したその日にフィッティングを済ませて持ち帰ることも可能。同社の調査によれは、約3人中2人が両耳で既成ドームを使用して、即日フィッティングが可能であることが示されている。
 このような特徴を持つOticon Zealは、補聴器への偏見やネガティブイメージの解消にも一役買いそうだ。デマント・ジャパンが実施した「難聴リスクと補聴器に関する調査」(p=708)では、「補聴器を使用していることは『すぐに分かる』または『注意深く見れば分かる』」と回答した人が69.5%。しかし、Oticon Zealの装用写真を見せると、87.9%が「思っていたより目立たない」または「やや目立たない」と回答したという。
 Oticon Zealは、欧米市場では先行して発売が開始済み。
ニールセン コマーシャルディレクターは「海外では発売から約3カ月で、2万9000人以上にOticon Zealがフィッティングされている。既存ユーザーへの買い替え需要だけではなく、新しいユーザー層を取り込めている」と話す。齋藤社長は「国内でも同様の変化を起こしたい、補聴器市場を変えていける可能性を秘めているOticon Zealで、市場そのものの拡大に全力を尽くしたい」と新製品への期待と抱負を語った。ユニークな製品であるだけに、その「強い熱意」を叶えられる可能性は限りなく高そうだ。
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