オリンパスは4月1日付で竹内康雄副社長執行役員兼最高財務責任者(CFO)が社長兼最高経営責任者(CEO)に就任する。笹宏行社長は代表権のない取締役に退く。
社長交代より話題を集めたのが、オリンパス株を5.04%保有する筆頭株主、バリューアクト・キャピタル・マネジメントからロバート・ヘイル氏を取締役として受け入れることだ。6月末開催の株主総会で提案する。併せて、オリンパスは指名委員会設置会社に移行する。
アクティビスト(物言う株主)を取締役として迎え入れるのは、日本企業では極めて珍しい。市場では「経営改革が進む」との期待が膨らみ、2月5日のオリンパス株は制限値幅の上限(ストップ高水準)となる700円(17%)高の4705円と、昨年来高値を更新した。1月11日にバリューアクトから取締役を招く人事を発表してから、株価は3割上昇した。2月7日には一時、4720円となり昨年来高値をさらに更新した。
バリューアクトは2000年、米サンフランシスコでジェフリー・アッベンCEOが設立したアクティビストファンドとして知られる。運用総額は約165億ドル(約1兆8000億円)。物言う株主としては、日本ではサード・ポイントが有名だが、実績はバリューアクトのほうが上といわれている。
バリューアクトは、表立ってプロキシーファィト(委任状争奪戦)を仕掛けて企業と対立するような手法をとらず、投資先企業に役員を送り込んで企業戦略を提案する。株主還元や事業売却などを強硬に求める「劇場型」物言う株主とは一線を画す存在だ。
米国では13年にマイクロソフト株を保有して取締役を派遣。クラウドビジネスの分野で出遅れていた同社の経営陣のテコ入れを求め、スティーブ・バルマー前CEOの交代劇を後押しした。最近では、株価の回復が遅れている米シティグループへの投資も明らかになった。
オリンパスへの投資は18年5月末、5%超を保有する株主に義務付けられる大量保有報告書で明らかになった。「オリンパスは日本での最初の投資先として理想的な会社だ」と声明を出した。
社長兼CEOに昇格する竹内氏は記者会見で、ヘイル氏を取締役として迎える理由について、「株主の視点を取り込み、グローバル資本市場やヘルスケア業界における経験と知見を活用できる」と話した。日本企業は、物言う株主の圧力をどうかわすかに汲々としてきた。オリンパスはなぜ、物言う株主を取締役に受け入れたのか。
「関係者によると、バリューアクトは18年末、同社が推薦する取締役を就任させるため、臨時株主総会の開催をオリンパスに要求していたようだ。外国人株主比率が高いオリンパスとしては、次の株主総会で現経営陣が退陣に追い込まれる可能性を残すより、バリューアクトと手を組む方が得策と判断したとの見方もある」(1月20日付日経ヴェリタス)
6月の株主総会では、ヘイル氏のほか新たに2人が取締役に就く見込み。うち1人は社外から選ばれる可能性が高い。指名委員会設置会社に移行することで、社外の意見が強く反映される。
●デジカメ事業から撤退の可能性も
オリンパスは、損失隠し事件後、取り組んできた経営の仕組みや組織を変える経営改革が遅れている。1990年代の財テク失敗で抱えた最大1000億円に上る含み損を簿外に隠蔽。歴代の経営陣トップがこれに関与し、「経営の中心部分が腐っていた」(第三者委員会による報告書)と酷評された。
損失隠しが発覚し、全取締役が退任したのに伴い、2012年、笹宏行氏が執行役員から社長に大抜擢された。
「笹氏は内視鏡一筋の技術者だったことから、経営手腕には疑問符が付いていた」(オリンパスの元役員)
主力の消化器内視鏡で世界シェアトップを誇る割には、利益水準が低い。2019年3月期決算(国際財務報告基準)は、連結売上高が前期比ほぼ横這いの7900億円で、純利益は54%減の260億円の従来予想を据え置いたが、2018年4~12月の実績では、純利益は前年同期比86%減の65億円だった。過去の会計不祥事をめぐる和解金やデジタルカメラの中国工場閉鎖に伴う費用などが重荷となった。株主から損害賠償を求められていた訴訟の和解金194億円を計上した。
新社長に就く竹内氏は経理、企画畑出身。欧州や米国の現地法人での勤務が長く、12年以降は財務部門を担ってきた。“ポスト笹”体制では若返りを図るとの見方があったが、果たされなかった。現在の経営陣は12年にそろって就任したが、次の世代が育っていない。
新社長の経営課題は、消化器内視鏡で高いシェアを持ちながら利益が低い体質を変えることだ。構造改革プラン「トランスフォーム・オリンパス」では、世界から優秀な人材を登用する新人事制度を導入し、医療機器事業を5部門から2部門に再編する。また、外科手術向けの腹腔鏡や関連製品に注力する。
デジカメ事業は低収益で、18年4~12月期に同事業の営業損益は131億円の赤字(前年同期は15億円の黒字)に落ち込んだ。株式市場では「経営に参加するバリューアクトは、デジカメ事業からの撤退や縮小を提案するのではないか」との見方が広がっている。
物言う株主を経営に参加させるオリンパスの“冒険”は、果たして成功を収めるのだろうか。
(文=編集部)

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