近年、地方から若い人々、特に女性が東京などの大都市へと流出することが問題となっています。なぜなら、若年女性が減少すると消費市場が縮小するほか、将来生まれるはずの赤ちゃんの数も減り、地域の人口減少に直結するからです。
豊かな自然と都市機能が共存する、典型的な地方都市の富山県。1人あたりの県民所得は全国上位、さらに持ち家比率や住宅面積は全国1位と生活の豊かさがうかがえるほか、女性の正社員比率は全国1位、3世代同居率や保育所入所率も全国上位と、住みやすさではダントツの印象を受けます。
しかし一方で、男性より女性が出ていく割合が多い都道府県では、トップの栃木県に続く第2位になっているのも事実。この矛盾については、本書に紹介されている女性たち14人の語りから見えてくるものがあるでしょう。彼女たちの語りは出生年の早い順に掲載されており、それぞれが富山でどのような人生を過ごしてきたかを読むことで、時代によって彼女たちがどんな選択をしてきたのか、あるいはどんな選択をできなかったのかを知ることができます。
たとえば1959年生まれで現在65歳の「かずこさん」は、「女は勉強せんでいい、家のことさえすればいい」という典型的な家父長制的思考の父親のもとで育ち、高校卒業後は就職し、23歳で結婚。夫の実家で義両親との同居を始め、家事、育児、介護をこなしながら、夫の「家事がおろそかにならないのだったら」という条件のもと、外でも仕事をし、自分の居場所を見つけてきました。
こうした2世代、3世代での同居は、昔はよくあることでしたが、よいところがある反面、「幅広い世代がひとつ屋根の下で暮らすため、嫁姑問題、介護問題、プライバシーの侵害、暴言・暴力といった危険要素はいくつも孕んでいる」(本書より)とも言えます。「かずこさん」の年齢に近い現在の親世代は、「自分たちが気苦労を経験しているからか、子どもに同居を強要する傾向はあまり見られない」(本書より)そうです。
いずれにせよ、女性流出の問題は女性に責任があるものではありません。山内さんは「社会に構造的な欠陥があるということ。社会を作る側の課せられた課題」(本書より)、上野さんは「女性に自由を与えたら外に出ていくって思うのは大まちがいだと思う。自由を与えて、そのうえでちゃんと選択してもらう。それがすごく大事」(本書より)と述べています。
これは富山に限ったことではなく、若い女性の流出に悩むすべての地方都市に言えることではないでしょうか。データだけを見るのではなく、当の女性たちの姿をしっかりと見つめること。そこに解決のヒントが隠されているはずです。
[文・鷺ノ宮やよい]