新聞連載で読んだ小説には、単行本になって読んだ作品とは違う思い入れみたいなものがある。毎日少しずつ読むことによって、登場人物たちに親近感を覚えるのだろうか。
『水車小屋のネネ』を、私は単行本になってから読んだ。18歳の理佐と、8歳の妹・律。親元から離れざるを得なくなった二人がやってきた小さな町に住む普通の人々と、理佐が働くことになったおそば屋さんの水車小屋にいるしゃべる鳥・ネネ。懐かしい80年代から2021年までが描かれた長い物語を思い出すと、私は今もじんわりと温かい気持ちになる。
『団地のふたり』の装画ですっかり好きになった北澤平祐氏による表紙イラストには、繊細さとやさしさがあって、物語を感じさせてくれる魅力がある。町に馴染んでいく姉妹の様子やネネのかわいさを、毎日挿絵で見られたらもっとよかったなあと思っていた。刊行から1年半が経過し、挿絵集が発売になると知り楽しみにしていたのだが、なんと、著者の津村記久子氏による書き下ろしの短編も収録されている!
連載時に掲載された挿絵300点が全て掲載されているのに加え、カラーイラストも多数加えられている。北澤氏のコメントと、物語の作者である津村記久子氏のひとことも時折加えられているという贅沢な1冊だ。町の雰囲気や普通の人々の暮らしがユニークな構図で描かれている中に、ファンタジックな作品も入っているところが好きだ。幼児服、鎧、セーラー服など、さまざまなファッション(?)に身を包んだネネもかわいい。小説を既に読んだ方は思い出アルバムをめくるように、まだ読んでいない方は小説を読みながら楽しんでいただきたいと思う。
短編小説の舞台は1987年だ。
おとーさんとネネが過ごしていた日々のこと(蝶ネクタイ着用のおぼっちゃん風ネネの絵に胸キュン)や、守さんが浪子さんと結婚して、益二郎さんのそば屋を継ぐまでの出来事が、杉子さんと守さんによって語られていく。二人の話をききながら律は言う。「私のおとーさんのような気もしてきたよ。会ったことないんだけど」
家族ではなく世代も生き方も違う人々が、自然に無理なく大切なものを共有し合うこの感じが、私はとても好きだった。
(高頭佐和子)