年金の「生涯受給額」を最大に増やす戦略があることをご存知だろうか? 一生を左右する「人生最後の賭け」は、年金受給のタイミングをいつにするか決めることと述べるのは、著者の服部貞昭氏。公的年金のあれこれについて徹底解説した書籍『知れば知るほど得する年金の本』(三笠書房)から一部を抜粋してご紹介。


今回のテーマは『基礎年金と厚生年金の繰下げは「同時と別々」、どっちがお得?』。
○基礎年金と厚生年金の繰下げは「同時と別々」、どっちがお得?

繰り上げでは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰り上げる必要があります。

一方、繰り下げでは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることができます。どちらか片方だけ繰り下げて片方は65歳受給開始でもいいですし、それぞれ別々の年齢に繰り下げても大丈夫です。

では、「同時に繰り下げる」と「別々に繰り下げる」では、どちらが有利なのでしょうか?

そこで、60~64歳の間で同時に繰り上げた場合と、66~75歳の間で同時または別々に繰り下げた場合の全パターンをシミュレーションしてみました。

老齢基礎年金を約7万円、老齢厚生年金を約9万円で合計16万円として計算しています。なお、手取りベースでの計算は時間がかかり難しいため、額面ベースでの計算を行なっています。

その結果、想定寿命がどの年齢の場合でも、基礎年金と厚生年金を同時に繰り下げるパターンが最も有利になることがわかりました。

なんとなく、片方だけ繰り下げるほうが有利に思えるのですが、結果的には、同時に繰り下げるほうが有利です。ただし、これは額面ベースでのシミュレーションです。手取りベースで考えて、年金以外に給与収入などがある場合は、結果が変わる可能性があることをご了承ください。

ここで一つだけ、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げるほうが効果的な場合があります。
それは、「加給年金」をもらえるときです。

加給年金とは、65歳未満の配偶者がいる場合にもらえる年金の家族手当のようなものでしたね。年間41万5900円(2025年度時点)もらえます。

老齢厚生年金を繰り下げると加給年金をもらえなくなるため、老齢基礎年金だけ繰り下げて、老齢厚生年金は65歳から受給開始する方法があります。

夫婦の年齢差が5歳と想定してシミュレーションした結果、想定寿命が81歳までなら同時繰り上げが有利です。想定寿命が82歳以降は繰り下げが有利になりますが、想定寿命82歳では、老齢基礎年金を68歳に繰り下げ、老齢厚生年金は65歳受給開始が最適となりました。想定寿命が上がるにつれて、最適な受給開始年齢は少しずつ上がっていきますが、老齢基礎年金は老齢厚生年金よりも2、3年くらい遅く繰り下げてもらうのが最適なパターンです。

65歳から69歳まで5年間、加給年金41万5900円をもらえますので、この期間はなるべく老齢厚生年金を受給したほうが有利になるわけです。なお、想定寿命が90歳以降は、両方繰り下げたほうが有利になります。

次に、夫婦の年齢差を10歳と想定してシミュレーションしました。

夫婦の年齢差5歳のときと結果はだいたい同じですが、想定寿命が90歳以降でも、老齢厚生年金を老齢基礎年金より2、3年早めに受給開始することが最適になります。

65歳から74歳まで10年間、加給年金をもらえますので、老齢厚生年金はできるだけ早めに受給開始したほうが有利になるわけです。


このように、加給年金をもらえる場合に繰り下げるのであれば、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げ、2、3年差をつけた上で、老齢厚生年金を早めに受給開始することがいいでしょう。

 

○『知れば知るほど得する年金の本』(服部貞昭/三笠書房)

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年金は「65歳」で受け取るもの――。この常識が、あなたの老後の足かせになるかもしれない。

じつは年金受給年齢は、65歳が「最適解」ではありません。

「繰り上げる」か、「繰り下げる」か――。その選択ひとつで、730万円得するか、470万円損するかの明暗が分かれるのです。

本書では、著者独自の計算ツールによって、「何歳からもらうと一番お得か」をシミュレーション。それぞれの最適解を提案します。

他にも、年金制度の基本から、申請しないともらえないお金、年金を増やす方法、iDeCo・企業年金の活用法などなど、“得する年金知識”を厳選・紹介していきます。

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