世界有数の地震大国、日本。2011年の東日本大震災や2024年の能登半島地震は記憶に新しく、最近でも4月20日(月)に三陸沖で発生したマグニチュード7.7の地震を受け、気象庁から「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発令されている。
そうした中の4月27日、東京都中央区・日本橋にある日本橋室町三井タワーの防災体制を、赤間二郎(あかま じろう)防災担当大臣が視察した。

日本橋室町三井タワーは大手デベロッパー・三井不動産株式会社の本社ビル。地下1階~地上2階部分で商業施設『COREDO室町テラス』が営業しているが、実は商業面だけでなく防災面でも日本橋エリアの核となっている。当記事では大臣視察に併せて行われた報道向け説明や現地見学の様子を紹介していく。
○常設の危機管理センター&4本柱の取り組みで災害に対応

赤間大臣の到着と現場視察に先立ち、日本橋室町三井タワーの8階にある三井不動産・危機管理センターで、BCP(Business Continuity Plan/地震など災害時における事業継続計画)の説明が行われた。同社ビルディング本部・運営企画一部の竹島裕耶氏によると、建物単体でなく全社体制で防災力を高めるため、下記4点を柱に災害対策を実施しているという。

○(1) 災害に強い組織体制づくり

日本橋室町三井タワーのワンフロアを使って危機管理センターを常設し、災害時は即座に対策本部として使用できる。これにより防災拠点の立ち上げ時間ロスをなくし、初動対応を迅速化。加えて同社の社員2名(役職者と一般社員、各1名)が交代で宿日直につき、24時間365日の即応を可能としている。
○(2) 地震を想定した設備

インターネットから独立した災害対策専用ネットワークや専用TV電話など複数の通信手段を確保し、地震で1つの手段が不通となっても別手段で代替。地震時の閉じ込めリスクがあるエレベーターについては、地震のP波(初期微動)を感知して最寄り階に止まるよう設計し、防災備品を入れたキャビネットを設けている。加えて管理ビル全てに「被災度数判定システム」を設置しており、地震時はフロア単位で10分以内に状況を判定し、入居テナントへの避難誘導などに用いる。

○(3)防災訓練

建物管理研修施設「三井不動産総合技術アカデミー」を2020年に千葉県柏市で開校。炎と煙からの避難体験や粉末消火器など、実機込の定期防災訓練を行っている。日本橋エリア内で再開発前に解体されるビルも活用し、扉破壊や放水消火などのリアルな訓練も実施。エレベーター閉じ込めからの自主的な脱出・救出など、外部の消防関係者だけでなく社員自身による災害対処も教育している。
○(4)地域や行政との連携

特定送配電事業「スマートエネルギープロジェクト」のもと、日本橋室町三井タワーの地下に発電プラントを設置。地震時には電気などエネルギーをタワー外にも安定供給する。帰宅困難者への対応について中央区と協定を結んでおり、8,000~9,000人を受け入れ可能。このほか行政や地域と連携した防災イベントも開催するなど、自社に限らず地域全体での防災力強化を目指している。

質疑応答では、都心部に多いインバウンド(外国人観光客)への対策について、多言語放送支援システムで避難誘導を行っているとの回答も。商業・観光の中心地ゆえにさまざまな国籍・人種が行き交う日本橋ならではの防災事情が垣間見えた。
○政府も三井の防災拠点に関心

続けて見学したのはビルディング本部災害対策総括本部。窓からの採光が明るいフロア内に、多くのPC・通信機器・デスクが並び、椅子には役割ごとに色分けされたベストがかかっている。
平時は静かな室内だが、首都圏を大地震が襲った場合は、大勢の人間がこのベストを着用して、慌ただしく災害対応へ当たることになる。

本部の壁面にあるのは横14面×縦3面=合計42面の超大型ディスプレイ。地震発生時には、このディスプレイに三井不動産の各拠点が映し出され、緻密な状況把握を可能とするのだ。

別室にあるのは水や食料など防災備蓄。東京都では「東京都帰宅困難者対策条例」に基づいて各事業所に3日分の備蓄を求めているが、日本橋室町三井タワーは1週間分を備蓄する。帰宅困難状況が3日を超えて長期化することも想定した措置である。

この後、赤間大臣がビルディング本部災害対策総括本部に到着。政府でも地震対策強化のため日本橋室町三井タワーの事例を参考にしたいとのことで、BCPの説明に耳を傾けていた。続けて向かうのは、タワーと地域を支える通常非公開の地下エネルギーセンターである。
○一般非公開のプラント施設を見学!

エネルギーセンターは地下2階に中央監視室を設置し、24時間体制で安全な運用と管理を行っている。地下3階の広大なプラント部分にはコジェネレーションシステム(CGS)のガスエンジン発電機をはじめとしたエネルギー設備を多数設置し、防振や浸水対策も徹底。災害による停電下でも安定した電気と熱を日本橋エリア内のビル20棟へ供給し、ライフラインの安定に役立つという。


ガスエンジンは川崎重工業製で、発電出力7,800kWのものを3台使用。間近で見る発電機は動作を抑え目にしている状態だったが、それでも駆動音はかなりの迫力で、サウナのような熱気を放っている。日本橋を裏側から支える「街の心臓部」が鼓動している様子を実感した。

プラント部分には将来的に新設備導入を想定した空きスペースや、地上部から大型機材を搬入するためのマシンハッチ(縦穴)も。そうした構造上の工夫を赤間大臣も時に興味深く、時に深刻そうな面持ちで観察し、担当者からの説明に聞き入っていた。

地震リスクが切っても切り離せない日本の国家運営と街づくりにおいて、日本橋室町三井タワーは今後の重要な参考ケースとなるだろう。

デヤブロウ 東京都在住のフリーライター兼イラストレーター。長年の趣味である東京都内の散策好きが高じ、都内のグルメ・観光・住環境など地域情報記事を主に執筆するほか、人物や企業のインタビュー取材記事や生活ハウツー系記事でも活動中。「東京シティガイド検定」取得済。街歩き後の銭湯&居酒屋巡りが大好き。 この著者の記事一覧はこちら
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