中谷との激闘を制し、自らの名声をより一層、高めた井上。その行く末に世界が熱視線を向ける(C)Lemino/SECOND CAREER/NAOKI FUKUDA

ロドリゲスの描く“青写真”

 東京ドームに詰めかけた5万5000人の観衆を熱狂させた中谷潤人(M.T)との激闘から数日。早くもボクシング界では、王座防衛を果たした井上尚弥(大橋)の次なる戦いに目が向けられている。

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 5月2日、ボクシングの世界スーパーバンタム級統一王者に君臨する井上が、世界3階級制覇王者の中谷に判定(3-0)で勝利した。

 まさに至高の戦いだった。井上が「脳が疲れた」と証言したように、互いに頭を使い、相手の動きを読みあう攻防がフルラウンドも続いた。ただ、最後は王者の経験値が優った。試合終盤の11回に、中谷のガードがやや緩くなった一瞬の隙から強烈な右アッパーを炸裂させ、左目に強いダメージを負わせた。これによって勢いが止まったチャレンジャーは反撃する余力を失った。

「世紀の一戦」や「日本ボクシング史上最高の戦い」と呼ばれたメガマッチは、配信サービスである『DAZN』で世界に配信された影響もあって、国際的にも強い関心を集めた。そして、“最強の王者”と“最強の挑戦者”の攻防は試合後も大きな話題を生んだ。

 そうした中で、やはり勝者となった井上は、早々と次戦の行く末がクローズアップされた。試合直後から当人は「僕の中では白紙」と明言しているものの、国内外のメディアでは、現世界スーパーフライ級3団体統一王者であるジェシー“バム”ロドリゲス(米国)とのスーパーファイト構想が浮上した。

 世界で最も権威があるとされる米老舗誌『The Ring Magazine』のパウンド・フォー・パウンドで4位に食い込んでいるロドリゲス。キャリア23戦(16KO)負けなしと実力十分の天才ファイターは、今年6月にWBA世界バンタム級休養王者アントニオ・バルガス(米国)とのバンタム級での一戦を予定しているが、すでに井上戦実現に向けた動きを加速させている。

『The Ring Magazine』の取材に応じたトレーナー兼マネジャーを長年務める元IBF世界スーパーフェザー級王者のロバート・ガルシア氏は、「ジェシー(ロドリゲスの愛称)にイノウエ以上の相手はいない」と宣言。さらに「来年初めに対戦が実現するなら、タイミングは完璧だと思う。その頃には118ポンド(バンタム級)で多くの答えが出ている」と、井上戦への青写真を語った。

「ジェシーとナオヤの体格差はそこまで大きくない。どちらも下の階級から上がってきた選手だからね。ただ、ナオヤの方が122ポンド(スーパーバンタム級)での経験があり、より完成されている。かたやジェシーはまだ118ポンド(バンタム級)ですら闘っていない。だけど、ジェシーには世界最高の相手と闘えるだけの技術はある。そして何よりもモンスターと戦いたいと望む気持ちがある」

PFP世界4位相手でも揺るがぬ“井上が勝つ”の声 井上尚弥に次戦候補との攻防を米記者が予測「イノウエは最も危険な相手との戦いでこそ真価を発揮する」

日進月歩で進化を続け、快進撃が止まらない“バム”ロドリゲス。新進気鋭の23歳は井上との対戦が有力視される天才だ(C)Getty Images

「日本でも良い」と認めるロドリゲス陣営

 無論、ボクシングは階級制のスポーツ。井上が中谷戦後に『The Ring Magazine』のフラッシュインタビューで「それはもうタイミング次第ですね」と認める通り、両者がベストコンディションを生み出せる“時”を見測る必要がある。

 しかし、現時点で来年度のスーパーバンタムへの飛び級も見越しているロドリゲス陣営は、「場所は日本でも良い」とやる気は十分。

メガマッチの実現をより鮮明に見据えている。

 そうした状況にあって展開される下馬評で「優位」と目されているのは、やはり百戦錬磨の井上だ。今回の中谷戦で芸術的な技巧を披露したことで、“怪物”に対する世界的な声価はより一層高まった感がある。

 米メディア『Boxing Scene』は、「ナオヤ・イノウエとバム・ロドリゲスは、どちらが勝つ?」と銘打った企画を展開。その中で編集担当記者たちは揃って「井上が勝つ」という持論を口にした。

 中谷戦の攻防内容をふまえて「イノウエは衰えの兆候に対する懸念が時期尚早であることを示した」としたデクラン・ウォリントン記者が「イノウエは世界最高のファイターと同様に、彼の真価は最も危険な相手との戦いでこそ発揮されると見せつけた。ロドリゲスは容赦なく、ここからより成長していくだろうが、彼が勝つには、イノウエを何らかの形で上回る必要がある」と指摘。新進気鋭の26歳が、いまだ実力不足との見解を示した。

 また、「イノウエも33歳になる。近い将来にフェザー級に進むことを考慮すれば、(ロドリゲスと)最高の状態でやり合うなら、できるだけ近いうちに実現するべき」との前置きをしたエリオット・ウォーセル記者は、こう記している。

「イノウエが勝つと思っている。なぜなら、彼はナカタニとの試合で、パワーだけに頼らず、頭を使って問題を解決する能力を見せたからだ。

また、ロドリゲスはナカタニよりも総合的に優れたファイターではあるが、そのスタイルこそ、イノウエにとってはより好都合。我々が知るあの“イノウエらしさ”を発揮できる相手だと考えている」

 ロドリゲスとの一戦が実現すれば、世界的な関心が強まるのは必至。それだけに水面下で進んでいく井上陣営との交渉の行方から目が離せない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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