Why Japan? 私が日本でプレーする理由
アントワーヌ・ブリザール/大阪ブルテオン
インタビュー後編(全3回)
サッカーのJリーグやプロ野球だけでなく、バレーボールのSVリーグにも、さまざまな国からやってきた外国籍選手が在籍している。彼らはなぜ、日本を選んだのか。
【ブルテオンで一番女性に人気があるのは?】
SVリーグのレベルはイタリアなどヨーロッパのトップリーグにも決して劣らない──世界を2度も制したアントワーヌ・ブリザールは、率直にそう思っている。そして彼自身、日本での異なるタイプのバレーボールを楽しんでいると言う。
「タイプは違っても、同じスポーツであることに変わりはない。それに冒頭に言ったように、僕自身、変化を求めていたからね。またSVリーグのセッターのなかで、自分は大きくてフィジカルが強い方だと思うので、"違い"を作ることができると思う。加えて、最高のチームメイトにも囲まれているので」
では大阪ブルテオンの仲間たちを、ブリザールに紹介してもらおう。
──チームで一番楽しい人は?
「ナカムラ(中村駿介)か、ヤマモト(山本智大)だね。ふたりともクレイジーで、自分には理解できないけど、きっといつも面白いことを言っていて、みんなを笑わせているんだ。言葉が通じなくても、僕も笑ってしまうよ。ヤマモトとは一緒にプレーするのも好きだね」
──チームで一番おしゃれな人は?
「うーん、どうかな。チームメイトとはコート以外で会う機会が少ないから、あまり知らないけど、たぶんニシダ(西田有志)だと思う」
──チームで女性ファンに一番人気があるのは?
「僕だよ!(笑)それは冗談だけど、会場に来てくれるファンの多くが女性で、しかも彼女たちは選手にプレゼントを持ってきてくれる。
【欧州では選手のエゴが肥大しすぎることも】
──チームで一番優しい人は?
「ブライアン・バグナスだね。最高に優しい人で、いつもみんなにポジティブな声をかけているんだ」
最もタフな対戦相手についても訊くと、こんな返答があった。
「サントリーだ。選手としては(ドミトリー・)ムセルスキーとタカハシ(髙橋藍)。前者にはサイズと高さに苦しめられ、後者はより全般的に能力の高いオールラウンダーだと思う」
あらゆる質問に明快に応じるブリザールは、様々なものを早く的確に理解する能力に長けているのだろう。瞬時にコートの状況を正確に把握し、最適なアタックを導き出す超一流のセッターたる所以かもしれない。そんな彼に、日本人選手の最大の特長はどこにあるのかを尋ねてみた。
「高度なテクニックを備えているのは間違いない。でも最高のクオリティーはそれ以外のところにあると思う。僕が毎日、チームメイトを見ていて思うのは、彼らにはネガティブな意味でのエゴがまったくないんだ。
むろん高いレベルでプレーするには、自分を主張するためにエゴがそれなりに必要だけど、日本人選手たちのそれは悪い方向に向いていない気がする。
ヨーロッパでは時に、選手のエゴが肥大しすぎて、個人がチームより重視されてしまうことがあるんだ。僕自身、そんなシーンを見てきたからよくわかる。例えば、チームのエースや重鎮には、話し方や接し方を気にしなければならない時もあった。そうしないと、後で自分が苦しむことになるから。コートの内外でね。
でもここには、そんなものはない。ニシダを見れば、よくわかるよね。彼はこのチームの絶対的なエース兼キャプテンであり、日本のバレーボール界を代表するスーパースターのひとりだ。でもだからといって、自分のことをチームより優先したりしない。調子のよくない時に、彼がベンチに下げられて、その後にチームが勝ったとしても、わがことのように喜ぶんだ。ふてくされたりは、絶対にしないね。
これは日本人選手に共通することだと思う。
【"クレイジーな"プレーをクライマックスで見せてくれるか】
ブリザールが太鼓判を押す世界のトップリーグにも引けを取らないSVリーグは今季、クライマックスに突入していく。大阪ブルテオンは昨季、レギュラーシーズンを首位で終えながら、チャンピオンシップの準決勝でジェイテクトSTINGS愛知に敗れ、決勝に辿り着けなかった。
今季はレギュラーシーズンを2位で終え、再び準決勝でジェイテクトと対戦することになった。チームはそこを乗り越え、さらに決勝を制すために、ブリザールを迎えている。
「昨季の結果は、仲間たちにとって辛かったと思う。でも、相手には優れた選手が揃っていたし、勝負には時の運もあるから。ジェイテクトはその後、主力を放出したけど、その補填もしているので、今季のチームも強力だ。実際、レギュラーシーズンには負けてもいる。完璧な準備をして、試合でハードワークしなければ、好結果は残せないだろう」
──あなたは東京五輪決勝で、トリッキーなツーアタックでフランスのマッチポイントを奪いました。あれほどの舞台と場面で、あんなに大胆なプレーができるのは「クレイジーだ」とチームメイトのイアルバン・ヌガペト(東京五輪のMVP)はこぼしたそうです。今季のSVリーグのクライマックスでも、そのようなパフォーマンスは期待できるでしょうか?
「どうだろうね(笑)。その瞬間でベストと思えるプレーを選択しているだけだから。
──成長した今は、より慎重にプレーするのですか?
「それもどうかな。繰り返すけど、自分はシンプルにその時々で一番と思えるプレーをしているだけだから。ただあんな風に得点が入ると、チームには勢いが生まれるから、良い兆候になるよね」
今季のチャンピオンシップでも、そんな瞬間が訪れるに違いない。
(了)
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アントワーヌ・ブリザール Antoine Brizard
1994年5月22日生まれ、フランス・サン=ジャン=ド=リュズ出身。2021年にフランス代表の正セッターとして、東京五輪を制してフランス男子初の金メダルを手にした。以後、2022年と2024年ネーションズリーグ(大会MVPとベストセッター)を連覇し、パリ大会で五輪も連覇し(大会ベストセッター)、フランス黄金時代を築いた一員に。クラブレベルでは、パリ・バレー(フランス)、スペシアズ・ドゥ・トゥルーズ(フランス)、プロジェクト・ワルシャワ(ポーランド)、ピアチェンツァ(イタリア)でタイトルを獲得。2025年6月に大阪ブルテオンに入団し、自身初の日本での生活を始めた。



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