女優・北川景子を形作ったのは、森田芳光監督だと言っても過言ではないだろう。彼が2011年に亡くなった際の葬儀では、人目をはばからず号泣した。
そんな森田監督の長編映画デビュー作『の・ようなもの』の35年後を描いた『の・ようなもの のようなもの』で、北川はヒロイン・夕美として出演している。この名前を聞いてピンとくる人もいるだろう。北川のスクリーンデビュー作『間宮兄弟』で演じた役柄と同じ名前なのだ。

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 数々の映画に出演し、主演を務めることも多くなった北川。そんな彼女が映画女優としてのキャリアをスタートさせたのが森田監督の『間宮兄弟』だ。しかしこの作品のオーディションの際、北川は上の空だったという。「大学1年生の時だったのですが、オーディションの日が体育の授業と被ったんです。テストがない科目なので3回休むと単位を落としてしまう。前回も別の映画のオーディションで授業を休んでいたので、どうしても休みたくなかったんです。大学はちゃんと卒業するって親とも約束していましたし、たかが体育、されど体育だったんです(笑)」。

 森田監督からの質問にも「焦って答えていました。人生で一番失礼なオーディションでした。
まさか選んで頂けるとは…」と懐かしそうに振り返る。しかし結果は合格。「びっくりしました。良く受かったなって。森田監督の作品も観たことないって言ったし…。それで監督から役作りの助けになるかもといって『の・ようなもの』を送っていただいたんです」。

 そんなゆかりの作品が、35年の時を経て北川の元に届いた。「森田監督が大切にしていた作品。お話をいただいたときは台本がまだなかったのですが『もちろんやります、やりたいです』って即答しました」と興奮気味に語るが、まさか自分がヒロインを演じるとは思っていなかったという。「どんな人をヒロインに持ってきても成り立つような作品。他にも森田組の女優さんはたくさん素晴らしい方がいらっしゃるので、驚きであると共に、とても光栄だなと思いました」。 『間宮兄弟』撮影時に受けた「北川の思った通りにやればいい。
そのままでいいよ」というアドバイスが、北川の芝居の原点となる。夕美という役を伸び伸びと、瑞々しく演じた。その後の北川の女優人生も「森田さんに作品を見て欲しいという気持ちは常にありました。森田監督と出会わなければずっとモデルのままだったかもしれません」と心情を吐露。森田監督が亡くなった際には、女優を続けていくモチベーションが保てなくなった時期があったことを打ち明けた。

 本作のキャッチコピーは「人生迷ったら、楽しい方へ。」。北川の人生にも多くの分岐点があったはずだ。「若い頃は迷ったら自分を苦しい方へもっていくタイプでしたね。“大変だけど乗り越えることが必要なんだ”って悩んで悩んで進んでいました。でも最近は自分が幸せじゃないと人も幸せにできないって思うようになってきました。年々痛みを感じなくなってきましたね(笑)。30代が一番楽しいって女優の先輩からも聞くので、そろそろ楽しくなるのかなって思っています」と目を輝かせる。


 「まだまだやったことない役だったり、舞台など未経験の芝居も多いので、チャレンジしていきたい。フットワークを軽く、垣根を作らず色々な面を見せられたらと思っています」と意気込みを語った北川。「映画に嘘がなかった」という森田監督の想いが詰まった本作で、10年前から成長し、いい意味で変わっていない“夕美”の姿を堪能して欲しい。(取材・文:磯部正和)

 映画『の・ようなもの のようなもの』は、2016年1月16日より全国公開。
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