ロシアが先に大々的に打ち上げた「2027~2031年ロ朝軍事協力計画」をめぐり、奇妙な沈黙が続いている。ロシア側は「長期的軍事協力」を繰り返し宣伝する一方、当事者である北朝鮮は、いまだにこの5カ年計画を公式メディアで語っていないのである。

ロシアのアンドレイ・ベロウソフ国防相は先月の訪朝時、「2027~2031年のロ朝軍事協力計画」に年内に署名する準備があると公言した。ロシア側メディアはこれを「長期的・制度化された軍事協力」と位置付け、ウクライナ戦争後を見据えた“新同盟”として強調している。

しかし、北朝鮮の反応は異様なほど慎重だ。

もちろん、金正恩総書記はロシア支持を公言し、クルスク戦線で戦死した北朝鮮兵を「英雄」として顕彰。今月9日にはモスクワの赤の広場で行われた対独戦勝81周年の軍事パレードで北朝鮮軍部隊が行進した。

それでも、問題の「5カ年軍事協力計画」そのものについては、北朝鮮側は積極的に宣伝していない。その「謎」を読み解くヒントになりうるのが、停滞する北朝鮮の軍事衛星計画である。

金正恩氏は近年、「偵察衛星の多量配備」を繰り返し打ち出してきた。実際、北朝鮮は万里鏡1号の打ち上げ成功を宣言し、「宇宙強国」路線を強調してきた。だが、専門家の間では、北朝鮮が本当に必要としているのは単なる“打ち上げ成功”ではなく、米韓軍を常時監視できる実戦的ISR(情報・監視・偵察)体系だとの見方が強い。

軍事衛星は、軌道に乗せるだけでは足りない。高解像度撮影、SAR(合成開口レーダー)、姿勢制御、データ中継、地上管制、リアルタイム運用――こうした「軍事衛星システム」としての能力では、北朝鮮は依然として大きな壁に直面しているとされる。

しかもウクライナ戦争は、衛星とドローン、リアルタイム情報連接が戦場支配を左右する現実を突き付けた。地下施設と移動式発射車両による“隠蔽戦略”に依存してきた北朝鮮にとって、「先に見つかった側が死ぬ」という現代戦の現実は深刻である。核戦力を保存して優位を保つためには、“空の目”が不可欠になったのだ。

北朝鮮はロシアへ兵士や弾薬を送り、ロシアは見返りとして食糧、燃料、軍事技術を供与しているとみられる。その中でも平壌が最も欲しているのが、軍事衛星・ISR分野の技術支援だとの観測は根強い。

つまり、北朝鮮が「5カ年軍事協力計画」をまだ大々的に宣伝しない理由は、“ロシアから本当に欲しいものを受け取れる確約を、まだ得られていないからではないか”という見方が浮上するのである。

平壌としては、派兵や砲弾供給という“カード”を維持しながら、「軍事衛星」「防空システム」「電子戦」「原子力潜水艦」「ISR統合」といった分野で、より深い技術移転を引き出したい思惑があるとみられる。

ロシア側は「歴史的同盟」化を急ぐ。しかし北朝鮮側は、まだ“契約書に完全署名する段階ではない”と考えているのかもしれない。そこには、極めて冷徹な取引計算が透けて見える。

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