北朝鮮の金正恩総書記が3日、新たに操業した核物質生産工場を視察し、「核物質生産能力の拡大」と「核兵器保有数の継続的増加」を宣言した。朝鮮中央通信によれば、金総書記は「核戦争抑止力を質量共に、持続的に、加速的に拡大する」と述べ、「戦争抑止戦略と戦争遂行戦略の実行において中枢を成す国家核戦力」をさらに強化すると強調した。
注目すべきは「戦争遂行戦略」という表現だろう。 北朝鮮はこれまで核兵器を「侵略を防ぐための抑止力」と説明してきた。しかし近年は、指導部への攻撃兆候などがあれば核兵器を先制使用できると定めた核武力政策法を制定し、戦術核運用部隊の整備も進めている。今回の発言は、核兵器を単なる保険ではなく、実際の戦争を有利に進めるための手段として位置付ける考え方を改めて示したものと受け取れる。 さらに金総書記は「兵器級核物質生産能力は従来の2倍をしのぐ水準に到達した」とも述べた。真偽は検証できないものの、北朝鮮が近年、高濃縮ウラン生産能力の拡張を進めているとの見方は各国情報機関や研究機関でも広く共有されている。新施設の所在地は不明だが、平安北道亀城(クソン)周辺の新たな濃縮施設ではないかとの観測も浮上している。 ここで思い起こされるのが中東情勢だ。 米国とイスラエルは近年、イランの核開発能力を封じ込めるため、軍事・諜報・経済のあらゆる手段を投入してきた。核兵器完成前の段階から、関連施設や科学者、軍事拠点に対して執拗な圧力を加え続けたのである。 しかし東アジアでは、すでに数十発規模とも推定される核弾頭を保有し、多様な運搬手段まで整備しつつある北朝鮮が、堂々と核兵器の大増産を宣言している。 しかも今回の発表は、「質的向上」ではなく「量的拡大」が中心だ。
核物質生産能力を倍増させ、核兵器保有数を増やし、新たな5カ年計画でさらに核戦力を拡大する――。平壌が発しているメッセージは極めて明快である。 それにもかかわらず、日米韓から聞こえてくるのは「注視する」「懸念する」「対話の扉は開いている」といったお決まりの文言ばかりだ。 もちろん、北朝鮮に対する軍事攻撃はイランの場合よりはるかに危険であり、現実的な選択肢ではない。ソウルや東京が報復の危険にさらされる以上、その違いは無視できない。 だが逆に言えば、それこそが問題の本質でもある。 イランの核開発が「将来の脅威」だとすれば、北朝鮮の核戦力はすでに「現在進行形の脅威」である。しかも今回の発表は、その脅威が今後も拡大し続けることを北朝鮮自身が予告したものだ。 ウクライナ戦争や中東危機に世界の視線が集まる中、東アジアでは核兵器を「使うための兵器」と位置付ける国家が、核弾頭の増産体制を着々と整えている。 そしてその事実に最も慣れてしまっているのは、皮肉にも最前線にいる日米韓なのかもしれない。
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