軍艦島で人間将棋(ガチ殺し合い)!
貴志祐介『ダークゾーン』は、なんとまあそんな設定の地獄のバトル小説なのであった。

エンタテインメント界の千手観音、貴志祐介の受賞歴は凄い。

1997年日本ホラー小説大賞
『黒い家』
2005年日本推理作家協会賞長編賞
『硝子のハンマー』
2008年日本SF大賞
『新世界より』
2010年第1回山田風太郎賞受賞
『悪の教典』
ホラー、推理、SF、山田風太郎!
エンタテインメント賞の全ジャンルコンプリートしようとしているんじゃないかって勢い。

新作『ダークゾーン』は、もう最初からフルスロットルなエンタテインメント。

気づくと、もう対戦は始まっている。小説の冒頭から緊迫。主人公は赤の王将(キング)だ。
そして、周りには十八人の男女。
人間将棋って書いたけど、ルールはオリジナル。
というか、気づいたら戦場にいるわけで、なんの説明もなく始まってる。
そもそも、なんで、こんな状況に陥ってるのか、ここが現実の世界なのか、何が目的なのか、何が何やらわけがわからない状況に放り込まれているのだ。
もちろん、読者も!
主人公と一緒に戸惑いながら、人間将棋バトルロワイアルを体験することになる。
人間駒たちを紹介しよう。

赤軍
王将(キング)
一つ眼(キュクロプス)
火蜥蜴(サラマンドラ)
鬼土偶(ゴーレム)
皮翼猿(レムール)
死の手(リーサル・タッチ)
歩兵1(ポーン)
歩兵2(ポーン)
歩兵3(ポーン)
歩兵4(ポーン)
歩兵5(ポーン)
歩兵6(ポーン)
DF1(ディフェンダー)
DF2(ディフェンダー)
DF3(ディフェンダー)
DF4(ディフェンダー)
DF5(ディフェンダー)
DF6(ディフェンダー)

青軍
王将(キング)
聖幼女(ラルヴァ)
毒蜥蜴(バジリスク)
青銅人(ターロス)
始祖鳥(アーキー)
蛇女(ラミア)
歩兵1(ポーン)
歩兵2(ポーン)
歩兵3(ポーン)
歩兵4(ポーン)
歩兵5(ポーン)
歩兵6(ポーン)
DF1(ディフェンダー)
DF2(ディフェンダー)
DF3(ディフェンダー)
DF4(ディフェンダー)
DF5(ディフェンダー)
DF6(ディフェンダー)

赤チームの駒人間は、ぼーーっと赤いオーラをまとっている。
青チームは、青オーラだ。
そして、ポーンとディフェンダーをふくめ、全員が、主人公の知人。
「あ、あいつどこかで会ったことあるな」ってヤツから、恋人まで、さまざまな人間が駒になっている。
主人公は将棋の奨励会三段。敵の王将人間は、ライバルだ!
駒人間は、それぞれ独特の姿形に変わっている。人間らしさが残ってなくて、ほとんど獣みたいになってるやつもいる。
どうぶつしょうぎ状態である。
攻撃や防御など、それぞれの特性を持っている。毒霧出したり、飛べたり、ぐるぐるしたり、さまざまである。
王将の特性は、命令。自軍の知人駒に命令すれば、さからえず、その通りに行動する!
リアルな王様ゲーム状態!っても、死の手とポーン1はキスしろーとか、そんなことやってる余裕はない。死のゲームはスタートしているのだから!

地獄の人間将棋、八局の攻防戦に挟み込まれるのが、8つの断章。
主人公の現実世界の回想である。

物語が進むにしたがって、この奇妙な世界がどのようなルールに支配されているか少しずつわかってくる。と、同時に、主人公の過去、つまり現実世界とのつながりが、謎として立ち上がり、結びつきはじめる。
バトルのスリリングさに、スリリングがもうひとつもふたつものっかって、スリリングスリリングスリリングな展開だ。

主人公の恋人が「死の手」だっていうのもいい。ヘンな手になってしまった恋人、それを気にやんでたり、人間将棋の戦場なのになるべく離ればなれになりたくないために戦略を誤ったり、くーっ、勝負は非情だ。

舞台となってる軍艦島(“長崎市の沖合にある、遺棄された海底炭坑の島??端島。コンクリートの護岸に囲まれて、建物が密集した独特の外観から、軍艦島という通称で知られている”)は、実際にある島だ。
軍艦島の写真集(『軍艦島 全景』『軍艦島海上産業都市に住む』)を関連書籍としてオススメ。
また貴志祐介作品には、『クリムゾンの迷宮』というこれまたデスゲーム小説の傑作があるので、これも読むが吉。
さらには、「ユリイカ」3月号は貴志祐介特集だ!
がんがん読めよ生きろよ!(米光一成)
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