はい、どっかで聞いたようなフレーズですみません! でも、ホントにホントなんですって。「Cave Story」すなわち「洞窟物語」。
なんたって昨年3月のWiiウェア版を皮切りに、11月のニンテンドーDSiウェア版、そして今夏はなんと、ニンテンドー3DS版がカートリッジで発売される予定。海外エンタテインメントのレビュースコアを集計して指標を示す、メタクリティックでも89点を獲得。大手のゲームでも80点未満のソフトが大半の中、快挙といって良いでしょう。
それにしても、同じく英語版が大ブレイクした「ゲーム発展国++」や、モノトーンな世界観が恐ろしくも美しい「LIMBO」をはじめ、これまでエキレビでも紹介したようなインディゲームが、欧米ゲームシーンではブームです。
あ、インディゲームってのは、企業ではなく個人や小集団によって制作され、リリースされるゲームのこと。日本の同人ゲームと似ていますが、商業志向が強い点が特徴です。インディゲームとしてリリースし、人気を集めた後に、企業と契約して本格的に商業販売される例も少なくありません。当然内容もオリジナル中心です、はい。
このインディゲームですが、欧米ではテレビゲーム黎明期から存在していました。ちょっとアイディアが浮かんだら、PCでゴリゴリと作ってしまい、企業に売り込んだり、通信販売でリリースしたり。
90年代以降、家庭用ゲームが全盛となった日本と違い、欧米ではPCゲーム市場が継続。インディゲームも生き残りました。さすがに2000年代に入ると、PCゲーム市場は先細りとなっていきますが、リーマン・ショックでアメリカ経済が一気に悪化。ゲーム業界でも大手スタジオで次々にリストラされる事態となりました。
その一方でiPhoneアプリやソーシャルゲームなど、小資本でも始められる新しいゲームプラットフォームが登場し、大手を離れたゲーム開発者が続々と転向。115円の低価格で大ブレイクした「Angry Birds」や、農場系ゲームで一世を風靡した「FarmVille」などのサクセスケースが登場します。
こうした中でインディゲームにも再び注目が集まってきたんですよ。ターニングポイントとなったのが、個人制作にもかかわらず、今年の1月に100万本セールスを記録した「マインクラフト」の大成功。単価が14.95ユーロ(約1700円)とあって、ゲーム業界が震撼したのは言うまでもありません。iPhoneアプリやソーシャルゲームで勝ち組・負け組がはっきりし始めた時期だっただけに、みんな色めきたったんですね。
んでもって「Cave Story」すなわち「洞窟物語」も、こうしたインディブームの渦中にあるタイトルの一つ。
肝心のゲーム内容はというと、ファミコンテイストが懐かしいドット絵スタイルのアクションシューティング。洞窟世界を探検して、敵キャラクターをプチプチと倒しながらストーリーを進めていく内容です。移動+ジャンプとショットの簡単操作で、とっつきやすさ満点。公式サイトなどで無償配布されているので、ぜひ遊んでみてください。なんか時代が四半世紀くらい昔にさかのぼった気がしますね。
ミミガーと呼ばれる種族が住む洞窟世界で覚醒した、記憶喪失の主人公。そこではドクターと呼ばれる人間の脅威にさらされ、ミミガーのスーのかわりにトロ子が強制連行されてしまいます。主人公はスーと共に洞窟を探索しながら、脱出手段と失われた記憶を探すのですが……というストーリー。条件によって展開が分岐するなど、アクションシューティングながら物語性が高い点が特徴です。
でもってゲームの感想なんですが、これが総じて任天堂ライクで、丁寧に作り込んであるものの、作り手の底意地の悪さというか、(若干悪趣味な)サービス精神も、そこかしこ。
天谷氏の講演によると、本作は開発に4年かけたんだとか。それも1回作って友達に遊ばせたところ、「期待外れ」とキツい一言をもらって、半ばやけくそになりながらゼロから作り直したそうです。ところが、それが功を奏して新しいゲームアイディアも加わり、ずっとおもしろくなったんだとか。いや、持つべきものは正直な友人、正直なレビュー、そして作り手の「諦めない心」ですね、はい。
もう一つのポイントは、本作をWiiウェアで移植して、北米向けに発売したプロデューサーの存在です。開発は米Nicalis社で、最初にオファーを受けたときは、天谷さんも「まだ早い、まだ作り込める」と断ろうとしたんだとか。もっとも、そんな暇があるわけもなし。半ば熱意にほだされて移植を承諾したところ、結果として大ブレイク。
同じように日本の同人ゲームがWiiウェアに移植され、海外発売された例には、シューティングゲーム「TUMIKI Fighters」(ABA Games)があります。「Cave Story」にしろ「TUMIKI Fighters」にしろ、国内発売の予定がないのは残念な限り。逆に同人ゲーム作家にしてみれば、海外での商業発売という道も開けてきました。GDCで小耳に挟んだところでは「日本の同人ゲームは宝の山だが、二次創作が中心で、商業展開しづらい。オリジナルゲームをもっと作って、世界にアピールしてくれ!」なんだそうですよ。
同人ゲームとインディゲーム、どっちが良い悪いではありませんが、もう確実に世界は狭くなっているんだなあと再確認。どこで何がブレイクするか、ホントにわかんないですよね。第2、第3の「Cave Story」、いっちょ狙ってみませんか?(小野憲史)