あぶないあぶなーい!
子供がそんなことしちゃ危ないよ!
『子どもが体験するべき50の危険なこと』は、タイトルどおり、わざわざ子供に危険なことを体験させるためのガイドブックだ。
1つめから「9ボルト電池をなめてみよう」だからね。
見出しのページには、イラスト。
電子レンジに変なものを入れたり、小川をせきとめたり、火遊びをしたり、そんなことをやっている様子が、電気製品マニュアルのような冷静なイラストで描かれる。
その下には、属性がアイコンと図で示される。
4つのカテゴリー:挑戦・経験・技術・工作
タイムバー:時間の目安
難易度バー:どれだけ難しいかの目安
危険の種類を示すマーク
次のページには「必要なもの」「警告」「やってみよう」「もっとくわしく」という項目が立てられ、実際にやるときの注意や、やってみる方法が書いてある。
たとえば、「9ボルト電池をなめてみよう」の項だと
必要なもの:9ボルト乾電池
警告:電池に舌を当てる時間は、1回につき2秒以内にしてください。
そして「やってみよう」に詳しいやり方が書いてある。
で、やったあとに、“これをやったことのない人に、どうだったかを言葉で説明してみましょう。どんな味なのか、またはどんな感じがするのかなどです。”とくるのがイイな。
そして「もっとくわしく」に補足情報。
“物を食べると、舌の「味蕾」の中にある化学物質の受容体から味の信号が神経に送られます。舌の表面には、特定の味を感じる部分が分かれて分布しています。
「なんで、わざわざ子供に危険なことをやらせるの!?」
って思った人は、2007年のTEDトークスの映像を見てほしい。
著者のひとりであるゲイバー・タリーの講演だ(下のプルダウンメニューでJapaneseを選ぶと日本語字幕がつく)。
5 dangerous things you should let your kids do。
「子どもにさせるべき5つの危険なこと」というタイトル。
5つの危険なことを紹介する前にスクリーンに写し出されるのは「二段ベッドから嬉々とした表情でジャンプしてる子供の写真」だ。
子供は危険なことをしちゃう。
子供を危険から守ることは必要だ。
だけど“それが過保護になってしまっては、子どもたちの危険に対する判断力が養われず、社会の責任が果たせません”。
掲示板「発言小町」に“最近の小学校では「知らない人に挨拶するな」と指導してるの?”というトピックがある。
小学生が、商店街のおじさんに「おはよう」と挨拶をした。おじさんが挨拶を返した。
そんな内容。
ひええええええーーーーと驚いて、さらにコメントに驚愕。
先生のほうが正しい。かわいそうだけど当然です。知らない人に声をかけられた時の悲鳴を上げる訓練も今の小学校では当り前。こんな世の中じゃ仕方ない。といったコメントがたくさん。
さらにこんなコメントもある。
「どんなに優しそうな人でも、それはウソだから気を付けなさい」と最近では言っています。
親の不安を子供に押し付けて、子供の世界を萎縮させるのっていいことだろうか?
(詳しくは「デスアイサツとゲーム脳、知らない人に挨拶したら死ぬ世界」を参照ください)
『子どもが体験するべき50の危険なこと』は、子供を危険にさらそうという本ではない。
慎重にしっかりと見守っている場で、子供が危険を学び、安全を探る技を身につけるための本だ。
(米光一成)