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負けたら毛を剃れ! 恐るべき日本レスリングの掟

この庄司彦雄が日本にレスリングを根付かせた功労者となった……とできれば非常に美しいのだが、史実はそこまで単純ではない。どうやら庄司はヤマっ気の強い人物だったらしく、レスリングで外敵と戦ったという名声を足がかりにして政界に進出しようという野望があったらしい(柳澤は、サンテルとの闘いもリアルファイトではなくプロレス、すなわち事前の取り決めがあった試合の可能性があると書いている)。ただ、彼の大学の後輩には八田一朗がいた。1931年4月27日、庄司をコーチとする早稲田大学レスリング部が発足する。そのとき主将に選ばれたのが、講道館四段を持つ八田一朗だった。以降八田は、実家の豊富な財力を武器に使ってレスリング研究に勤しみ、1932年には同輩の山本千春とともに前述の大日本アマチュアレスリング協会を設立する。
以降の流れは、日本にレスリングという競技を根付かせようとする大志に燃える八田と、彼の足を引っ張ろうとする者たちとの政争の歴史といってもいい。身近な敵には、八田自身も段位を授かっている講道館がいた。レスリングという競技を牛耳れば、オリンピック代表として公費で海外に行くことができる。まだ洋行が夢の出来事であった80年前、それは大きな利権となるほどの魅力だったのである。早稲田の先輩である庄司もまた、八田の足をひっぱろうとした。こうして内外の人間を敵に回しながらも、八田は最終的には勝利を収めていった(講道館は専修大学レスリング部に人材を送り込んでいったため、八田率いる早稲田勢と専修とは宿敵の間柄にもなった)。だが時代は八田には微笑まなかった。日本は絶望的な全面戦争へと突入し、レスリングは敵性競技として禁止に追いこまれたからだ。日本レスリングが真の夜明けを迎えるのは、1945年の敗戦以降のことである。...続きを読む

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