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負けたら毛を剃れ! 恐るべき日本レスリングの掟

ここまででなんと全14章のうちの第1章の内容しか紹介できていない。おそるべき密度だ。第2章以降は文字通り1からの模索で八田率いる協会がレスリング競技の「幹」を作り上げていく過程が描かれる。もちろん八田だけの手柄ではない。たとえばレスリングに必要なマットとシートを守ったのは正田文男である。戦災によって早稲田の道場は消失したが、正田によってマットとシートは運び出され、地下倉庫に保管されていたのだ。この正田は正田醤油の御曹司であり、かの美智子妃陛下の従兄弟にあたる。また、八田が姻戚関係にあった野口一族は、三笠宮崇仁殿下と深い結びつきがあった。その縁から三笠宮殿下はレスリング協会の大きな後ろ盾となられたのである。日本レスリング界繁栄の裏面にそうした宮家の尽力があったことは、あまり知る人の多くない事実である。
本書の内容は前後で大きく2つに分かれている。言うまでもなく、八田一朗時代とそれ以降だ。戦後の八田は、文字通り私財を投げ打って日本レスリング協会(1946年改称)のために尽くした。協会の進展は「八田イズム」の浸透・実践とともにあったと言っていい。その中で偉大なレスラーが次々に育っていく。競技で実力を発揮するばかりではなく著書によって自らの技術を体系づけ、世界のフリースタイル・レスリングの技術向上に貢献した天才・笹原正三(メルボルン・オリンピック金メダリスト)、1964年の東京オリンピックで金メダルを獲得した5人のレスラーたち、そのうちの1人上武洋次郎はオリンピック後にアメリカに留学し、カレッジ・レスリング関係者の投票で1960年代最高の選手に選ばれた(ちなみに1950年代はプロレスラーのダニー・ホッジ)。1976年のモントリオール・オリンピックで金メダルを獲得した高田裕司は、身体能力だけでいえば日本レスリング界の生んだ最高の才能の持ち主かもしれない。なにしろ試合で下になることがほとんどないため、ブリッジの練習の必要がほとんどなかったというほどだ。...続きを読む

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