山里「わたしそこまで思いませんでしたよ」
YOU「だからさ、触りたいな、エッチしたいなって男性がなんで思うかって言うと、この女は俺の子孫を……ね?」
プロ彼女「オスとメスですから。メス感ってやつです」
有名人専門に交際する「プロ彼女」との放送コードギリギリのトーク。『アウトデラックス』でも『ダウンタウンなう』でもでもなく、放送しているのはなんとEテレ。7月1日に放送されたEテレ『ねほりんはほりん』からの一コマだ。

顔出しNGの人形劇トーク
『ねほりんはほりん』は顔出しNGのゲストを招き、南海キャンディーズ・山里亮太とYOUが赤裸々な話を聞き出すトーク番組。しかし、番組には人間の姿が全くない。登場人物は全て2頭身のかわいい人形になっているのだ。
山里亮太とYOUはモグラの”ねほりん”と”はほりん”に、ゲストはブタに姿を変えている。ゲストの服装はそのまま人形で再現されていて、プロ彼女のブタはピッタリした黒のワンピース。腰はくびれていて大きな胸はこぼれそう。左手には結婚指輪をしている。
事前に収録したトークを元に人形劇が作られているので、声と動作の当て振りはバッチリ。プロ彼女が自撮りテクニックを見せる場面でも、スマホを上から構え、胸を持ち上げて強調する(ブタが)。
見た目はかわいいモグラとブタなのに、話はとても生々しい。プロ彼女ブタはアスリート系が好き。スマホでモグラ達に元カレの写真を見せて「日本代表じゃないですか!」と驚かれる。体の相性が大事という話では夜の生活を「お宅訪問」と表現するプロ彼女ブタ。
Eテレの人形劇を見ているはずなのに、パラレルワールドに放り込まれた気分になる。
「全員顔を出さない」という選択
テレビ番組で顔出しNGの人物とトークをする場合、すりガラス越しにする・後ろから撮る・仮面をかぶせるなど様々なアプローチがある。顔を出さないなら音声だけにすればいい。でもトークという体裁をとる以上、人間の姿を残しておきたくなる。
この場合、聞き手は顔を出しても構わないので、自然と絵面は「普通の人と異形の者が話している」という風になりがち。顔は隠されているはいるけど少しは姿が見えるので、話し手に抵抗感が生まれることもある。
『ねほりんはほりん』は逆転の発想で、「全員顔を出さない」ことにした。
トーク部分は音声だけの収録。声は変えるので、プライバシーは最大限守られる。話し手も聞き手も同じレベルの姿であり、絵面に統一感が出る。顔出しNGの人物でも「人形」で容姿や動作を再現できる。
そして、こんなことができるのはNHKしかない。
現在放送中の『フックブックロー』『銀河銭湯パンタくん』をはじめ、『クインテット』や『ハッチポッチステーション』、古くは『ひげよさらば』『プリンプリン物語』『ひょっこりひょうたん島』など、人形劇のキャリアは言わずもがな。いつから人形劇をやっているんだろう?と調べたら、テレビ放送開始の3週間後(1953年2月)に「玉藻前」という人形劇を放送している(NHKアーカイブスより)。60年以上前だ。
『ねほりんはほりん』の人形は、見た目を再現するだけでなく、リアクションや仕草もとても細かい。人形の顔パーツは固定されて動かないのに、笑ったり、真顔になったり、しょんぼりしたり、という感情の動きがわかる。人形劇のキャリアが活きるからこそ、この形式が成立しているのだ。
Eテレ『ねほりんはほりん』、7月19日(日)午前1時38分(土曜深夜)に再放送があります。
(井上マサキ)