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筒井康隆最後の長篇か? 噂の「モナドの領域」最速レビュー

そして言うのだ。〈このふらふらしておる眼だがね、これはわしの遍在に驚いてこの結野君のからだが反応しておるだけだ〉。
全知、そして遍在──つまり結野教授は、〈神〉に憑依されてしまったのか?

安易な依存心は「神」にも「世界」にも届かない


教授は言う──
〈神というのはお前さんたちが勝手に作って勝手に想像しているだけだからね。実際にはお前さんたちの想像している神とはだいぶ違うよ〉

教授(の体を動かしているもの)が神であるらしいと知った人々のなかには、勝手な思い入れを彼に投影しようとしてくる者たちもいる。
たとえばひとりの母親は、幼い息子を車椅子に乗せてやってきて、この子の足を治してやってくださいと頼む。
すると教授の口から、このような言葉が出る──

〈不幸な子供というのはだいたい、よくない両親のかわりに社会から罰せられているんだが、その罰を与えているのはわしではなくお前さんたち人間なんだ。〔…〕不幸はそれを生み出した連中や社会だけによるもので、〔…〕そもそも責任なんてものも存在しない。架空のことだ。罪とか罰とかもだ〉

責任や罪・罰という概念の本質は、なにより人間社会が自己都合で要請する約定である。
こういった事実は、神にたいして安易な救いを求める人間の依存心を打ち砕くことだろう。
しかしそのいっぽうで、自分を幸福にするのも不幸にするのも、だれのせいでもなくてすべて自分しだいだ、と考える者にとって、この考えかたはどれほど勇気を与えてくれることか。

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