27話は、こんな話
惣兵衛(柄本佑)に包丁を突きつけられた菊(萬田久子)を助けたはつ(宮崎あおい/さきの大は立)。「やっとうちにもお家を守ることができました」と健気に言い、悪いのは、時代と新政府だと指摘する。
あさ(波瑠)も一時は、五代(ディーン・フジオカ)に新政府のやっていることを責めたものの、商人の集まりに参加することで世の中の流れを理解していく。
「びっくりぽん」は「倍返しだ」になり得るか
昼行灯ふうな新次郎(玉木宏)が実はあさの代わりにはつの行方を探していたことがわかって面目躍如の27話。新次郎ファンには誇らしい回だと思う。
だが、この回、最も注目すべきは、あさが五代相手に啖呵を切るシーンだろう。
五代に、つまらなくなったと批判され、さらにお店は勝手につぶれたらいいとまで言われて腹を立てたあさは「びっくりぽんなお金せびっておきながらどの口が言うとりますのや」と反論し、挙げ句に「明治の世なんてくそくらえだす」とまで。
結果的に五代を喜ばせたとはいえ(五代ってほんとにへんなひと)、あさの言動はかなりリスキー。でも見ているほうは実に痛快だ。
これを見ていて、何かに似ていると思った。
「半沢直樹」だ。
「あさが来た」は商人のお話でもあるし、主人公が世の不正に疑問を感じ、
すぱ! と切れ味よくただすことで、視聴者の溜飲が下がるようになっている。
しかも「倍返しだ」と「びっくりぽんや」がそこはかとなく響きが似ている
(「だ」と「や」が韻を踏んでるだけど)。
「半沢直樹」人気は、いまだに「下町ロケット」にも受け継がれているくらい影響力があるくらいだから、経済ドラマの「あさが来た」も意識しない手はないし、事実、多くの視聴者に見やすさで高い支持を受けているのも、そこが鍵なんではないか。
もともと「半沢直樹」が大阪の作家・花登筐が書いた商人ドラマ「どてらい男(やつ)」(73〜75年/関西テレビ)のテイスト踏んでいると言われていることもあるし、「あさが来た」はNHK大阪で制作しているという点では、「半沢直樹」の朝ドラ版というよりも、むしろ、元祖・花登筐ドラマの流れを汲んでいると言っていい。
伝説のヒット商人ドラマのノウハウを取り入れながら、あさは世の不正にガツンと喝を入れ、革新していく。その姿を我々は頼もしく見つめていきたい。
(木俣冬)
木俣冬の日刊「あさが来た」レビューまとめ読みはこちらから