様々なキャラクターグッズや、LINEスタンプなどが発売されている。

1976年に誕生した『ユニコ』。
このころの手塚治虫は『ブラック・ジャック』 『火の鳥』 『三つ目がとおる』 『ブッダ』など、とんでもない量の仕事を抱えていた。
にもかかわらずフルカラー連載の仕事を《手塚はなんの躊躇もなく引き受けてしまいました》(リトルモア版『ユニコ』上巻より)。
このラインナップを見てもわかる通り、この時期の手塚漫画は傑作揃い。
『ユニコ』は少女向けとはいえ奥深い物語だ。特にカワイイものが大好きな女子には是非読んでほしい。
オススメの理由その1、とにかくかわいい

『ユニコ』はサンリオが発刊していた少女向け漫画雑誌『リリカ』で1976年に誕生した。
(サンリオの自社キャラクターでは1974年にハローキティ、1975年にマイメロディとリトルツインスターズが誕生している)
また手塚は自らを「ディズニー狂い」と称するほどディズニーに影響を受けている。特にバンビは「80回いや100回以上観た」んだとか。(なんと手塚が描いたバンビやピノキオも存在する→『復刻版 手塚治虫のディズニー漫画 バンビ ピノキオ』)
『ユニコ』はそういう背景もあり、サンリオっぽい要素もディズニーっぽい要素もある手塚漫画なのだ。

ストーリーは、毎回ユニコが記憶喪失の状態でスタートする。
「ぼく じぶんでじぶんが なんか わかんないの」
「どうしてここにいるのかもわかんないし」
「どっからきたのかも おぼえてないの」
美の女神ビーナスによる嫉妬というなんとも理不尽な理由で、毎回思い出をうばわれてさすらいの旅を続けるユニコ。
可愛そうな宿命を背負ったキャラクターなのである。
ちなみに「かわいい」と「かわいそう」の語源は、同じ言葉(古語)「かはゆし」なんだとか。
『鉄腕アトム』『ブラック・ジャック』のピノコ、『リボンの騎士』のサファイア王子、『ジャングル大帝』のレオなどもかわいいだけじゃない、かわいそうな過去や宿命を背負ったキャラクターだ。
オススメの理由その2、カラフルで美しい

2015年春にリトルモアから出版された完全新版『ユニコ』。
手塚没後に出版されたオールフルカラーのスコラ版を定本としている。
原画から最新技術でスキャニングしたとのことで、スコラ版・ソニーマガジンズ版に比べ色が鮮やか。判型がひとまわり大きいのも嬉しい。
《色原稿は基本的に、アシスタントに平坦な色を下塗りさせ、最終的に手塚治虫が仕上げていました。登場人物の顔の影などがその代表的なものです。最初に完成イメージがあったと思われます》
(リトルモア版・下巻、解説より)
《「先生がアシスタントに指定を出すときには、サクラマットの水彩絵の具で手塚プロ独特のチャートができているんですよ」》
(手塚プロ・元チーフアシスタント福元一義氏へのインタビュー/Prints21 No.56 2000年秋号より)
下巻の解説によると、ユニコ執筆時のカラー原稿は基本的に24色のサクラマット水彩絵の具で着色されたとのこと。
けっしてプロユース用ではない、子供たちが学校で使う水彩絵の具でここまでの鮮やかさと表情が出せるのかと驚いた。
オススメの理由その3、少女たちへ込めたメッセージ
ユニコは自分を愛してくれた者、優しくしてくれた者にだけ、不思議な力を発揮する。
「きみがぼくにやさしくしてくれたから ぼくはちからが出せるようになったんだよ」
「どんなことでもしてあげられるよ!」
インディアン、お姫様、無邪気な黒猫、スフィンクス。
そして死刑になるほどの罪を犯した不良娘や、自分を助けようともしない悪魔にも。
ユニコは他人が決めた善・悪ではなく、自分に幸せをくれたものに対して全力で幸せを返す。
「愛」って何か。「優しさ」って何か。
考えるヒントが一話一話それぞれに大切に込められている。

(小西りえこ イラストも)