脚本:渡辺千穂 演出:梛川善郎

145話はこんな話
ワンピースのお直しの話が新聞に載ると、たちまちお直し希望が殺到。すみれ(芳根京子)たちはすべて請け負うことに。
お直し部結成
「いつか必ず ビッグ・ワンダーランドをつくります」(健太郎/古川雄輝)
本店がリトル・ワンダーランドになって、ありがとうと笑顔で、また最終回かと思った。土曜日だし、いよいよ最終回かと。
思えば、25週は毎日が最終回のようだった。
「勇気」「愛情」「信頼」「希望」を携えて冒険の旅に出るゲームみたいなモチーフからはじまった「べっぴんさん」なので、マルチエンディングのゲームを意識したのか。もしくは、夢かと思って起きたらまた夢だったみたいな、最終回かと思ったらまた最終回のマトリョーシカ型か。おとなしく見えて案外エッヂが効いたドラマだ。144話にあった、背景は現代、人物は過去という場面も、単なる回想ではなく、現代と過去が折り重なっている多様性があって興味深かった。
いずれにしても、真の最終回のハードルはどんどん上がっている。
さて、社長の武(中島広稀)ではなく、健太郎が新聞取材を受けている。写真写りもよく、社長も納得づくの様子。
新聞には「創業者4人」とちゃんと描かれていた。初期に明美(谷村美月)が新聞記者に無視された件があったなあと懐かしく思う。
明美といえば、25日にアップされた「べっぴんさん」公式サイトの谷村美月のインタビューで、143話のことを語っているのだが、「一緒の墓に入りたい思うたら、籍入れてもええし」という台詞が出て来る。そんな台詞あった? 「いやや思ったらおらんようになっていい」じゃなかった? まさか聞き違い? と録画とオンデマンドを見返すと、やはり「いやや思ったらおらんようになっていい。かっちり縛られるんじゃなくて、臨機応変に」しかない。撮影時に台詞が変わったか。アフレコで変えたのか。ある意味、これもマルチ展開?
余談だが、この場面、「一緒になったらどやろ」と言われた瞬間、後の水飲み鳥が動き出す。これも「べっぴんさん」らしいニクイ演出である。
話を戻そう。
すみれがお直し部をやることになってうきうきしていると、紀夫(永山絢斗)が「僕もなんか見つけたいなあ」と言って、そののち、カメラを買ってくる。
映写機はどうしたんだ! 映画を趣味にしたらいいじゃないか! でもこういう新しいものに飛びついては飽きる人ってよくいるよね。
なぜキスシーン
健太郎とさくら(井頭愛海)が、自分たちも何かしなくちゃと思い、本店をリトル・ワンダーランドにする。
そんな相談をしつつ、キスしようとして、赤ちゃんが泣いて・・・というほのぼのシーンは、あってもいいけどなくてもいい。
リトル・ワンダーランドの中心に木があってそこから旗が四方に飾られているのは、141話のすみれの「一本の木」発言とつながっているようで、良いデザイン。
伝説の縫い子チーム
話は前後するが、お直し部について。
すみれたちがお直し部をやることになって、かつての縫い子たちも駆り出される。
「伝説の縫い子チーム!」と感激する若い縫い子たち。
20年以上前のワンピースを送ってくる顧客をはじめとして、ものすごい量のお直し依頼が。
この時代(70年代)はこんなにも衣服を大事にしていたのか。
石油ショックで節約の流れにあったのかもしれず、会社にも「電気をこまめに消しましょう」と張り紙がある。
これにはやはり東日本大震災の頃を思い出す。ちょっと最近節電、節約忘れがちな人も多いのではないか。
みんなで襟を正そう。
新しいものをつくることも楽しいが、直してまた引き継ぐことの尊さを感じるすみれを見習って、人間の命だけでなく、ものも大切にして長く使っていくことを心がけたい。
第2の人生 なにげない日々を楽しみながら
すみれたちの第2の人生がはじまった。
脚本家の渡辺千穂は、ラジオ番組で「第二の人生を描きたいというのがあった」から最初に一気に子供を産むところまで進めたというような主旨の発言をしていた。
昭一(平岡祐太)も定年だという。え、60歳? と思ったらこの頃は55歳が定年だった。早い!
その定年話から「それで買い物に行った」と自分の買い物(カメラ)を見せびらかす紀夫。お年寄りは自分勝手だということなのか。
永山絢斗、中年(老人?)ぽさを出すために微妙にウエスト周り太らせている気がする。お腹にタオルか何か巻いているんじゃないだろうか。
繰り返すが、真の最終回のハードルはどんどん上がっている。
「べっぴんさん」、いよいよ残り一週間(6回)! 刮目する!
(木俣冬)