第19週「ただいま。おかえり。」第109回 8月7日(月)放送より。
脚本:岡田惠和 演出:黒崎 博

109話はこんな話
奥茨城母の会が、緊急招集された。
悪口を言えないのがきつい
奥茨城母の会とは、みね子の母・美代子(木村佳乃)と、時子(佐久間由衣)の母・君子(羽田美智子)と、三男(泉澤祐希)の母・きよ(柴田理恵)の3人で結成されたもの。
女子会みたいな感じで集まって、いろんな話をする。
109回の議題は主に、実(沢村一樹)がみつかったものの、別の女・世津子(菅野美穂)と暮らしていたという衝撃の事実について。
女優・世津子には、気取った感じがなく、丁寧で、品が良く、えらそうなところがないため、美代子が悪口を言えないところが、きつい。こういう時、相手の悪口を言えたほうが、気が楽だってことには、共感できる。
世津子にかなわないと感じる、一番大きい点が、ふかふかのスリッパであるという、視点がとてもおもしろい。
そんな部分は、真実でもあるし、いっぱい傷つきながらも、なんとか、笑いに転じようとする美代子の心の現れでもあるのだろう。
結局、母の会は全員、涙に暮れる。その姿が、なんとも溜まらない。
木村佳乃が、都会の輝きの象徴のような女優と比べられるプレッシャーに押しつぶされそうになっている、田舎の素朴な女性を、チャーミングに演じている。
実、頑張る。
実は、あかね荘に馴染もうと、修繕作業などをやっている。
みね子と一緒に病院にも行っている。
世津子がみね子に手紙を送ってきて、以前、診てもらった病院の先生は、実の記憶喪失について、「どうしようもなく理不尽でおそろしく悲しいことが起こってしまった時に、それについて考えたくない強い気持ちから来たもの」であろうと言っていたと書いていた。一生思い出せない可能性もあるらしい。
スリッパの話と並んで、描写が細かいのは、世津子の手紙の文字だ。
折につけ出て来るみね子の手紙の、かなりしっかりした文字と比べて、世津子の字はやや拙く、漢字があまり使われていない。勉強をあまりしないまま、俳優になったと思わせる。上品に見えても、決して育ちがいいわけではないのだろう。確かに、現実世界でも、芝居はうまいが、台本の難しい漢字が苦手な俳優はいる。
文字を書くのが苦手だが、一生懸命、書いたのだなと思うと、やっぱり世津子に同情の気持ちが沸いてくる。
また、みね子がさっそく手紙で、実のことを知らせた綿引正義(竜星涼)からの返事は、男子らしいと形容すべきなのか、タッチに勢いがあった。
三者三様、文字にも人生が見える。
そして、5月
柏木堂の店主(三宅裕司)が、柏餅をふるまい、中庭で、みんなで食べる。
柏餅を頬張りながら、みね子は奥茨城村での田植えについて、思いを馳せる。
みね子の田植え話に、実の表情が変わって・・・。
予告で、奥茨城に帰って田植えをするのは、すでに了解済みではあるが、続きが待ち遠しくてならない。
奥茨城エピソードが早く観たい!
(木俣冬)